KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年8月号
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病理のことを知ってフレンドリーに感じてもらおうという趣旨で開催しています。「病理」を「料理」と間違えていたという話もあるぐらいですからね。でもすぐに病理医リクルートにはつながらないかな(笑)。私はつながらなくてもいいと思っています。今の子どもたちは携帯電話やゲームなどの普及によって、バーチャルな世界にふれている時間ばかりが増えていると思います。実際に体験することで、サイエンスの世界に興味を持つきっかけになればいいなと思っています。これは病理だけでなく、これからの日本のためにも私たち科学者が果たすべきミッションの一つ。「サイエンスって、こんなに面白いよ」。それは私達が伝えなくてはね。今後も努力を惜しまずに続けていきたいと考えています。―健康メッセでは新しい企画など考えておられますか。残念ながらここ2年はコロナでオンライン開催しかできていません。とても人気だったのですが、子どもたちと直接交流できる機会が戻ってくるといいですね。身近なものでプレパラートづくりをして、病理医が使っているような精度の高い顕微鏡を使ったり、病理画像を最新の8K画面で見てもらえるといいなあ…。子どもたちの生き生きとした驚きの顔を見るのが今から楽しみです。また日本病理学会では公開講座等は実施しているのですが、親子で楽しめるようなイベントはやっていません。そこで、情報発信委員会委員長を務めている私が中心になって、健康メッセのようなイベントを日本全体で毎年開催できるようにしたいと取り組みを始めています。―顕微鏡像を見て、最近の病気の傾向について何か感じておられることはありますか。膵がんをはじめ特定のがんが随分増えてきています。原因のひとつに高齢化社会ということがあるでしょうね。ウイルスなどには起因しない原因不明の肝炎も多いですね。薬剤性の肝疾患に近い例を見ることもあり、何か口にしたものが原因になっているのではないか、健康食品やサプリメントの過剰摂取は影響してはいないだろうかと懸念しています。―健康食品やサプリはダメですか?!全てがダメというわけではないのですが、特定の成分が凝縮されているのですから注意が必要です。何にでもすぐ手を出さずに、きちんとしたエビデンスがあるのか、有効なのかを慎重に判断してから使ってほしいと思います。何ごともほどほどが肝心ということです。―病理診断学も日々、進歩しているのでしょうね。顕微鏡のデジタル化も徐々に進み、モニターを使って複数の施設や先生方と顕微鏡像を共有できるようになりました。神戸大学が中心になって主要病院をネットワーク化する構想が進んでいます。病理医はそれぞれが得意分野を持っていますから、ネットワーク化が進めば、すぐに専門医の意見を聞き診断に役立てることができます。こ94

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