KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年8月号
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前シリーズで、患者さんと顔を合わせることなく縁の下で治療を支えている「病理」という分野についてお話しいただいた伊藤智雄先生。デジタル化が進み、医療機器の進化も著しい現在の「病理」を伺いたく、病理診断科を訪ねました。―「病理学」とは?「物(もの)」の「理(ことわり)」、つまりどのようにして成り立っているのかをミクロ・マクロの見地から研究するのが「物理学」、「物(もの)」を「病気」に置き換え、病気の成り立ちを研究するのが「病理学」です。顕微鏡が出現してからは、診断にさらに大きな役割を果たしてきました。顕微鏡像は病気によってそれぞれに違うということが分かり、顕微鏡で見るとどの病気なのかが判別できるようになりました。それまでは症状を見て診断するしかなかったものが、顕微鏡像が診断に応用できるようになり病理診断が始まりました。そこに遺伝子やたんぱく質の解析などさまざまな要素が加わって発展してきたのが現代の病理診断です。―病院内での病理診断科の役割は?検査や治療では体の一部分の病変を切りとり、顕微鏡等で観察して、確定診断をつけるのが病理診断科です。患者さんと直接お会いすることはほとんどないのが病理医です。―確定診断とは。診断には臨床診断と病理診断の二つがあります。臨床診断とはさまざまな画像などを基に外科や内科など臨床の先生方がつける診断。病理診断科が顕微鏡で検体を見て判断するのが病理診断です。特に腫瘍の診断は、病理診断が最終的な確定診断になることがほとんどです。それを基に治療方針が決定されます。―治療の根幹を担っているのですね。なぜ確定診断をした病理の先生が患者さんに直接説明をしないのですか。 検体から得られるさまざまな情報と確定診断を主治神大病院の魅力はココだ!Vol.12神戸大学医学部附属病院病理診断科伊藤 智雄先生に聞きました。92

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