KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年8月号
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を今後どのように生かすべきなのでしょうか。矢野 BCPの作成と、医療・介護・行政の連携強化が重要になってくると思います。BCPとは「Business Continuity Plan」の略で、事業継続計画といわれ、緊急事態に遭遇した際に、損害を最小限にとどめて事業の継続や早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における対応を取り決めた計画のことです。令和3年度の介護報酬改定で、介護事業者にはBCPの作成が義務化されました。─パンデミック時にはどのような対応が求められますか。矢野 例えば、感染者が発生すると、入所型施設では感染者対応などのために平時より業務量が増大する一方、通所型施設では介護業務の縮小が行われるため平時より業務量が減少します。そこで、通所型施設から入所型施設へ人材を派遣することで、必要度の高い介の入院・隔離などの十分な対応ができず感染が拡大したこと」「常勤医だけでは十分な医療提供が困難であったこと」「スタッフの感染や人手不足による介護崩壊が生じたこと」などが問題点として考えられます。─これらの問題の背景や根底には、何があるのでしょうか。矢野 ①医療崩壊の阻止に優先順位が置かれた可能性、②慢性的な人手不足の問題、③連携不足の3点を考えます。─医療崩壊の阻止に優先順位が置かれたとはどういうことでしょうか。矢野 パンデミック時、キャパシティーを超える医療需要の高まりに対してトリアージ、つまり「選別」が実施され、医療崩壊を阻止しつつ、限られた医療資源で最大効果が発揮されるような対応が都道府県、各医療機関でおこなわれました。その結果、高齢者介護などへの配慮がいきわたらなかった可能性があったのではないかと思われます。─介護業界の人手不足は以前から指摘されていますよね。矢野 しかもそれに加えて、職員のコロナ感染や濃厚接触者としての隔離対応のため、必要不可欠な介護がおこなえない状況となりました。特に施設型の介護施設では問題が深刻でした。─連携不足はどのようなところにありましたか。矢野 医療と介護、都道府県と市町村などです。介護に関わる介護サービス業者・行政・医療機関はお互いアナログな関係でつながっていますが、パンデミックのような状況では迅速で正確な情報共有が難しくなります。また行政内においても「医療行政は都道府県中心」「介護福祉行政は市町村中心」という役割分担が、パンデミック対応における連携に影響を与えた可能性が考えられます。─このようなコロナ禍の教訓89

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