KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年8月号
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中内㓛(中央)より左に2人おいて三浦さんを言うために押し寄せたそうです。そうした中、中内さんは扉の前に1枚の紙を貼りました。そこには、「日用の生活必需品を最低の値段で消費者に提供するために、商人が精魂を傾けて努力しその努力の合理性が商品の売価を最低にできたという事が何で悪いのであらうか?」と書かれていました。今もこの文を読むと胸が熱くなります。中内さんは、その後も「日本の物価を半分にする」を旗印に掲げ、「安さは正義である」ということを世に問い、知らしめてこられました。やはり、安さへの執念は、中内さんからの大切な教えです。学生時代の話になりますが、私が流通科学大4回生の時に主将を務めていたバスケットボール部が兵庫県の大会で初優勝しました。表彰状とトロフィーを持って理事長の中内さんに報告に行きました。想像以上にとても喜んでくれました。あの時の嬉しそうな笑顔は今も忘れません。そして、中内さんは、皆でステーキでも食べなさいとポケットマネーを出してくれました。しかし、質より量を取り皆とカツ丼やラーメンの大盛を食べていると偶然そこを中内さんが通られ、当時プロ野球ダイエーホークスの門田選手を例に挙げ、スポーツマンは何より体づくり、栄養摂取が先決だからステーキを食べなさいと、またポケットマネーから倍の額を出してくれました。中内さんは、若い人たちに期待を寄せ、接するのが好きでした。そして、色々なことを教えて下さいました。大学を創設してしまうほどの教育への情熱、このトップの人財育成への志も中内さんの大きな教えの一つです。そして何より、中内さんが常に唱え実践してこられた「For the Customers」こそ最大の教えだと思っています。中内さんは、常にお客さまの立場でビジネスを捉え、挑戦し続けてこられました。消費者主権も流通革命も「For the Customers」の実現のためであったと思います。「よい品をどんどん安く」も、その目的を達成させるための最高の手段であったのだと思います。中内さんは、そのことを生涯を通じ、身をもって教えて下さいました。87

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