KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年8月号
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昭和63年、神戸で開学した流通科学大学晩年は学生の指導に情熱を傾けたをもって指導にあたった。ときに優しい笑みを浮かべながら。「自分にとって一番幸せな時間だ。教壇に立つと、神戸三中の恩師であり、戦時色の強い時代に勇気を持って自由主義教育を実践し続けた近藤英也校長の教えがよみがえる」と語っている。平成13年(2001)からはゼミも受け持ち、若者たちとの交流が何よりの楽しみだったという。老いてなお好奇心旺盛、チャレンジ精神を持ち続け、生涯教育を貫いた。82歳にして運転免許を取得し、ルート66をドライブしてアメリカを横断することを夢見る。しかしそれは叶わずに、平成17年(2005)にこの世を去った。中内㓛なくして、今日の我々の生活はあっただろうか?㓛が求めたのは流通のシステムとしてだけでなく、さらに「より豊かな生活」を願った。小林一三に憧れていたのはその証左で、学生を前に小林について多くを語っている。物質的にも、精神的にも、満たされた暮らしをすべての人に。苛烈な戦争体験を経験して抱いた平和への思いを、我々も受け継いでいくべきではないだろうか、真の豊かさとは何かを考えながら…。 流通革命で豊かな暮らしを実現するという『願』を立て、それを叶える『行』として努力を積み重ねタフに行動し、日本の社会を変えた中内㓛。その存在なくして、今日のライフスタイルはあっただろうか?神戸の発展はあったであろうか?我々も神戸もいまなお、知らず知らずのうちに中内㓛が遺した恩恵にあずかっている。参考文献流通科学大学『中内㓛回想録』学校法人中内学園流通科学大学『ネアカ のびのび へこたれず 中内㓛言行録』学校法人中内学園流通科学大学中内潤・御厨貴『生涯を流通革命に捧げた男 中内㓛』千倉書房五味文彦・鳥海靖『もういちど読む山川日本史』山川出版社下川耿史『昭和・平成家庭史年表』河出書房新社 ほか73

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