KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年8月号
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くっていまして、それが評価されて親父(二代目・中村義明)が現場監督として住宅を建てたんです。寝室は完全な洋室ではなく和を感じる方が良いのではないかということで、ロックフェラー邸のイメージでいこうとなったんです。─和洋が合わさるというのは、神戸っぽいですよね。中村 山の中で落ち着いた有馬の空気感と、神戸の粋な感じを合わせられたらなと思いました。駿川さんにすごく信頼していただいたので、いろいろな提案をさせていただきました。駿川 骨格は中村さんにお任せして、ここにどんな和紙を貼るとか、そういう細かいところは何度も打合せして好みを伝えました。中村 座敷と寝室、お風呂を造って、それをどう繋いでいくかが一番難しかったけれども、2畳の次の間を設けたことでうまいこといったかなと思います。駿川 座敷の寸法は茶室の寸法になっています。壁にもこだわりました。聚楽土です。中村 今どき3ミリしか塗らないとか、聚楽風のクロスとかが多いのですが、しっかりと12ミリ塗っています。部屋を印象づける床柱は、何がお好みかをうかがい、赤松になりました。駿川 いろいろ悩みましたね。お客様を緊張させないような雰囲気を心がけました。中村 男っぽいのか色っぽいのか、これで方向性が見えました。雰囲気は色っぽいですね。北山丸太の床框とか。駿川 先生からの命題だったんです。「セクシーな空間をつくれ」と。中村 和室から正面に見える景色がいまひとつでどうしようかと思ったのです。しかし左手には秀吉の湯殿の跡を一望するんですね。それで腰をかけてそちらを眺められるように手すりを設けました。部屋の色気に合わせて竹をあしらっています。天井は赤杉の中杢と呼びまして、希少な板を大工が鉋できれ中村外二工務店代表中村 公治さん中村外二工務店創業:1931年伊勢神宮茶室、京都迎賓館などに携わる。「建築とは施主の運命を伸ばすこと」初代中村外二のことばを、二代目義明氏と共に引継ぎつつ、中村流数寄屋スタイルを更に進化させている。38

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