KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年8月号
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昔は左右分子の区別は生き物にしかできないとされていたのですが、私は化学の力を使って人工的に右と左を作り分ける技術に挑戦して成功しました。お母さん、お父さん方の真剣な顔を見ていて、話がむずかしくなってきました。ごめんなさい。化学変化を起こす機能を持っている金属の周りに左右を区別できる有機化合物をつけ、これを触媒に使って働いてもらって右と左を作ります。大きな反響を呼びました。20世紀半ばに医薬品は右と左を50対50で混ぜて薬を作っていた結果、起きたのがサリドマイド薬害です。右の薬品は秀れた催眠剤ですが、一方で左の薬品は健康な身体を傷つけました。結果的に1994年、FDA(アメリカ食品医薬品局)が「右か左かきちんと作れ」と指針を出し、医薬の健全化を図りました。そこに私の研究成果が使われ、世界の多くの企業の努力でいろいろな安全な製品ができました。社会的に貢献したことが認められ2001年にノーベル化学賞を頂きました。子どもたちにこの国と社会の未来を託します今の社会を見ていると、いつの間にか誰もが「お金」や「自分」のことばかり考えて生きているように思えます。行き当たりばったりで、自分がどう在りたいのかを示さず、政治も国としての誇りを失っています。このままでは多くの国が日本を信頼できなくなり、無視するようになってしまいます。皆さんは100歳まで心身ともに健やかに生きる力を身につけて、たくましく育ってください。お父さん、お母さん、大切なことは基本の中にあります。末梢の細かいことにばかりこだわらないでください。私はこの国や社会の未来を子どもたちに託したいと思っています。安藤忠雄さんと共に32

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