KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年8月号
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でも、クラシックにはこだわらない。オペラを観てください、といっても初めての人はなかなか行きにくいでしょ。そこで、まずは、私のコンサートで美しいアリアを聴いて欲しい。でもアリアはストーリーありきの曲だから、やはり重くなりがち。もっと普通に聴いたことのあるポピュラー音楽を声楽家の歌声で聴きませんか?例えば「花は咲く」。いい曲でしょ、私はこの曲を聴いた時、歌いたいなぁと思いました。クラシックの発声法は何百年もかけて作り上げられています。その魅力を伝える曲はどのジャンルでもいいはずです。「千の風になって」で立証済みですね。そうなっているといいですね。ご縁があって、クラシックを勉強してきた私が歌うことになり、歌の持つエネルギーが伝わったから、今、私はここでお話しているんですよね。実は、ポピュラー音楽を歌うことに意欲的になったのにはきっかけがあってね。日本に三大テノールがやってきた時です。アンコールで彼らが歌ったのが「川の流れのように」。それが本当に素晴らしかった。魅せられました。ジャンルも国も関係ない。いい歌はいい!そう思いました。もうひとつ、力を注いでいる事についてお聞きしてもいいですか(笑)。もちろん。彫刻家、秋川雅史ですね(笑)。私は愛媛の西条市出身で、西条市には大きなお祭りがあります。私の人生には生まれた時からだんじりがあって、だんじり彫刻を見て育ちました。愛媛を離れても、彫刻を見るとだんじりを思い出して血が騒ぐ(笑)。それで、いつか自分も彫りたいと思うようになりました。※三大テノールとはテノール歌手、ルチアーノ・パヴァロッティ、プラシド・ドミンゴ、ホセ・カレーラスの3人が、共同で活動した際の名称。彫刻家、秋川雅史40歳になったある日、「よし、彫るぞ」と、木と彫刻刀を買ってみましたが、わからないことばかり。木との付き合い方も彫刻刀の使い方もわからない。そこで、「彫刻」「教室」で住所を入れて検索。近所に先生を見つけて習いに行きました。先生はすごくてね、初めは手の動きに見とれてしまいました。そして「もう一つ道をみつけた!」と思いました。私は歌のプロになりましたけれど、「彫刻にもプロがいるんだ」と当たり前のことに感動した。世の中には色んな道があるってことに、ですね。今では仏像の奉納もされていますね。そして昨年は「二科展」で入選。どんな作品ですか。仏像は彫りたいと思っていました。シンプルに、好きな仏像をこの手で日々時間をかけてね。お寺に置いていただけるのは本望です。大きな目標は楠木正成像でした。これは何年かかっても彫るぞ、と決めていました。ステイ25

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