KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年8月号
105/136

元町映画館神戸市中央区元町通4-1-1266席+1(車椅子)TEL.078-366-2636https://www.motoei.com/presentsアジア・太平洋戦争末期の1945年1月、アメリカ軍上陸が目前に迫った沖縄県の知事に赴任した島田叡。本土決戦に備えた持久戦に持ち込むべく、県民を総動員する軍からの指令に対し、島田は沖縄警察部長の荒井退造らと県民の避難に最後まで尽力した内務官僚であったことを、昨年公開のドキュメンタリー映画『生きろ 島田叡―戦中最後の沖縄県知事』で初めて知った方も多いのではないだろうか。神戸出身の島田(萩原聖人)と宇都宮出身の荒井(村上淳)、沖縄戦を指揮した第32軍司令官の牛島満(榎木孝明)、国のために奉仕し、犠牲となった鉄血勤皇隊やひめゆり部隊の若者たち、そして沖縄県民たち。熾烈を極めた沖縄戦を描く劇映画『島守の塔』は、それぞれの正義や葛藤、そして命がなくなるその瞬間まで生きたあまたの人々の姿を映し出す。注目したいのは、爆撃で家族を亡くし、軍に「生きて虜囚の辱めを受けず」を叩き込まれた比嘉凛(吉岡里帆)。戦時下でも県民と交流する島田のもとで働き、その人となりに触れていく。島田からの「生きろ!」の言葉を胸に、香川京子演じる現代の比嘉が慰霊塔に手を合わせるクライマックスは、信念のバトンをつないだ証だ。人々の暮らしや風習、歌も織り込んだ構成に五十嵐匠監督の沖縄への眼差しを見た。  (江口由美)vol.8〜今月の1本〜「生きろ!」のバトンをつなぐ島守の塔(2022年 日本 130分)<その他の注目作>8月20日より2週間、元町映画館12周年記念企画「オキナワンダーランド〜映画で発見する沖縄」では、多彩な顔をみせる沖縄とそこで生きる人々の姿を映し出すドキュメンタリーや劇映画を特集上映します。『島守の塔』と合わせてお楽しみください。■『島守の塔』監督・脚本:五十嵐匠 脚本:柏田道夫原案: 田村洋三著「沖縄の島守―内務官僚かく戦えり」中央文庫刊出演: 萩原聖人、村上淳、吉岡里帆、池間夏海、榎木孝明、成田浬、水橋研二、香川京子配給: 毎日新聞社、 ポニーキャニオンエンタープライズ  ©2022 映画 「島守の塔」制作委員会元町映画館にて8月6日(土)より3週間上映。©2022 映画「島守の塔」製作委員会上映スケジュールはコチラ▶105

元のページ  ../index.html#105

このブックを見る