KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年7月号
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鈴木 地域医療構想での病床の再編・統廃合の判断基準に新興感染症対策が入ってなかったこともあり、結果的に病床調整が裏目に出たという印象を受けます。今回の事態を受けて、厚生労働白書に掲載された2019年度病床機能報告では、2025年の見込み病床合計数は119.1万床から123.3万床へ上方修正されました。また、2021年の通常国会で「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」が成立し、新興感染症等の感染拡大時における医療体制確保に関する事項を医療計画へ位置づけとして「新興感染症等の感染拡大時の医療」が都道府県の作成する「医療計画」の記載事項に追加されることになりました。これを受けて2024年度スタートの第8次医療計画へ向け、新興感染症が発生しても感染症対応と一般医療を両立できるよう、受け入れ候補となる医療機関や場所・人材などの確保の考え方や、医療機関の間での連携や役割分担の具体的な医療機関についての感染症流行前の評価の再検証も必要になるのではないでしょうか。─ほかにも人口減少や後期高齢者の増加、人材不足などの課題がありますが、どのように対処すべきなのでしょうか。鈴木 脳神経外科や循環器内科、周産期医療など高度な医療を支える病院に医療資源を集中するのもひとつの方向性です。また、休日夜間の救急受入機能の維持や、後期高齢者にニーズの高い心不全、肺炎、尿路感染症などの入院については、地域包括ケアシステムを支える医療機関が対応する体制を構築していく必要があると思います。これらの実現のためには、必要な医療が地域全体で一体的に提供される体制、より高度な救急医療や手術を提供する医療機関へのアクセスの確保、在宅医療体制やICTで補完する仕組みの構築、医療従事者の集約化や機能分化を補うネットワークの構築が、今後検討される課題になっていくのではないでしょうか。記載事項について検討をおこなうことになりました。─病床を守るためには医療機関の経営も大切ですが、コロナ禍の影響はいかがですか。鈴木 国立病院や労災病院、JCHO(地域医療機能推進機能病院)、公立病院などでは補助金で減収分をカバーしていますが、一般の医療機関は軒並み収支がマイナスというのが現状です。2019年の医療経済実態調査では、発熱外来やコロナ患者受入施設、在宅療養支援診療所で損益差額率が低下し、特に小児科や耳鼻咽喉科の経営悪化が指摘されています。また、急性期型の民間の一般病院も大きな打撃を受けています。─影響はまだ続きそうですね。鈴木 受診控えの継続が見込まれる一方で、補助金が打ち切られ、医療機関の経営は今後も厳しい状態が続くと予想されます。これに向けて、病床稼働率の向上が求められることでしょう。同時に、経営改革のスピードアップや地域医療構想再検証対象92

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