KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年7月号
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の審査はプロデューサーたちに任せて…」こうして上白石萌音が安子役を、るい役を深津絵里が、るいの娘、ひなたを川栄李奈が演じることが決まった。川栄は、朝ドラのヒロインのオーディションを5回受けて落ち、今回6回目の挑戦でついに「ひなた」という大役をつかんだのだ。演出家の心得とは安達さんは京都市で生まれ育った。「ところで本名ですか?」「そうなんですよ。父がイタリア人画家、モディリアーニが大好きで、もじりと名付けてくれたんです」地元・京都の高校から東京大学文学部へ進学。映像の世界へ進もうと決めたのは20歳の頃だった。「学生時代、たまたま飲み屋で隣に座った映画監督と知り合い、翌日から撮影現場へ行き、監督助手の仕事を数年続け、それがきっかけで映像の世界へ就職することになったんです」運命を変えたその監督の名は林海象。当時、林監督から伝授されたという「演出する際の心得」が、とても興味深い。《初心忘るべからず。マイペースに粘り強く。役者の芝居は大切に。芝居の中に必ずポイントがある。フィルムはちゃんと見ろ。何事も意思疎通…》「当時、書き留めていったメモは、今も大切に持っています」と安達さんは言う。巡り巡って師匠の林監督とは2010年、NHKドラマスペシャル「大阪ラブ&ソウル この国で生きること」で初めてタッグを組んだ。脚本を林監督が、演出を安達さんが担当したのだ。演奏も歌も…徹底された演出「カムカムエヴリバディ」というタイトル通り、NHKのラジオ英語講座が一つの大きなテーマとなり、劇中、洋楽もふんだんに登場する。るいという名は、米ジャズ界伝説のトランペッター、ルイ・アームストロングから付けられ、ひなたの名は、ルイの名曲「オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」(日向の道を)に由来している。「音楽の演出にも徹底してこだわりました」。ジャズ好きの安達さんは、これまでもドラマの中で、数々の名音楽シーンを演出してきた。オダギリジョー演じるるいの夫、錠一郎はトランペッターだ。「オダギリさんには撮影前までにトランペットの演奏を覚えてもらいました。深津さんにはドラマ後半でシンガーとして『オン・ザ…』を歌ってもらいましたし…」芝居と同様、演奏や歌唱シーンにも絶対に手を抜かない。「撮影までに深津さんは歌を、オダギリさんはトランペット22

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