る中で、安達さんの頭の中にはこんな壮大な構想が浮かび、イメージが膨らんでいった。「これはまるでパール・バックの『大地』のようだ。それを日本の市井で生きた家族の日常を、戦争など激動の時代を大げさでなく主人公の家族の視線で淡々と描く。これまでになかった家族の物語が作れそうだ…」と。米作家、パール・バックが19世紀から20世紀の中国で生きる三世代の家族を描いた物語。バックはこの作品でノーベル文学賞を受賞した。金字塔ともいえる小説だ。絶妙なキャスティング「祖母から母、そして孫へ…。3人が生まれ成長し、次の世代へとバトンを手渡し受け継いでいく。コロナ禍で社会が沈む中、ドラマを見る人たちへ届ける〝贈り物〟。そんなドラマにしたい…」作品にとって最も大切なも9作目。朝ドラの演出は慣れたものかと思いきや、こう否定された。「毎回、初めての題材、テーマで描くわけですから、いつまで経っても慣れることなどありません。毎回、試行錯誤しながら演出しています。特に今回は最も難しかったかもしれない…」と打ち明けた。なぜなら、今作では、これまでの朝ドラで培ってきたドラマ制作の概念を超える手法に挑戦したからだ。3人のヒロインで100年を描く。それは、1961年から60年以上放送されてきた朝ドラ史上ではなかった初の試みだった。「一人の主人公の人生を半年間で一作描く。朝ドラが築いてきたこの伝統を変えるのですから。局内では反対意見ももちろんありました」と安達さんは語る。脚本家の藤本有紀さんと、この〝前代未聞の朝ドラ〟の脚本作りについて話し合いを重ねで夫を失う安子(上白石萌音)。幼いころに母・安子と生き別れた後、京都で家庭を築く娘のるい(深津絵里)。るいの娘、ひなた(川栄李奈)は成長し、祖母と母を再会させる…。2025年まで、三世代のヒロインが生きた100年の物語を紡ぎ出し、幅広い視聴者層から支持された。「物語の舞台は、とにかく徹底的にこだわって作り込みます。だから、その世界の中で思う存分に生きてください…」岡山、大阪、京都を主な舞台として物語は展開する。演出部を束ねるチーフとして、ロケ地やセットなど、ドラマの世界観の基礎となる「舞台」を完成させるために他のディレクターや、照明部、美術部、衣装部などのスタッフらを指揮。出来上がったその「舞台」で演じるキャストに向かって、安達さんはそう伝えたと言う。「カーネーション」や「べっぴんさん」、「まんぷく」など朝ドラを担当するのは今作が20
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