KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年7月号
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レのために制作したポスターが、出品作品でもないのに、この作品にグランプリを与えるべきだと、イタリアの審査員が提案したために、審査が混乱したというエピソードなどが生まれ、その後、国際展の出品依頼や受賞などが重なって、何となく版画家の仲間入りを果たすことになった。この展覧会のあと、僕は去年まで版画は休業していた。版画作品は思い立ったように作るので、その間、何年も空白時期がある。それ以前の作品との関連性は全くないので、毎回バラバラの傾向の作品を作る結果になる。まあこのバラバラは版画に限らず、絵画作品にも共通していて、制作の都度、主題も様式も異なるのは毎度のことである。去年作った版画は写楽をテーマにした木版画である。この美術館では発表されるかどうかは未定であるが、さらに目下、「寒山拾得」を版画にした木版画を制作中である。版画技術も年々進化していて、驚くような作品も現れている。いつか、そのような新しい技術による版画作品も作ってみたいと思っている。美術家 横尾 忠則1936年兵庫県生まれ。ニューヨーク近代美術館、パリのカルティエ財団現代美術館など世界各国で個展を開催。旭日小綬章、朝日賞、高松宮殿下記念世界文化賞受賞。令和2年度 東京都名誉都民顕彰ほか受賞・受章多数。横尾忠則現代美術館にて開館10周年記念「横尾忠則 寒山拾得への道」展を開催中。3月に小説「原郷の森」(文藝春秋社)が刊行された。http://www.tadanoriyokoo.com責場 C 1969年 東京都現代美術館蔵17

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