KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年6月号
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―数あるオペラ作品の中で、好きなヒロインは?そうですね、沢山ありすぎますが⋮。私のレパートリーから申しますと、1人目は『トゥーランドット』の女奴隷リュー。リューは最後に自害しますが、その前に美しいアリアを2曲歌います。オペラの作曲家は作品に理想の女性を忍ばせると言われていますが、プッチーニの理想の1人がリューだったのではないかと思います。彼は女性が好きでプレイボーイでしたが、人生で実際に起こった事件を一部モデルに描いた作品が『トゥーランドット』。そんなことを調べてみると面白いですよ。2人目は『リゴレット』のジルダ。これもまた悲劇。愛のために命を落とす儚いヒロインです。オペラって、愛、憎しみ、悲しみ、別れ等、シンプルなストーリーが多いのです。ヴェルディは人間の持つ声のパワーを最大に発揮させて、ドラマとぴったりの音楽で私たちの心に感動を生み出します。3人目は『ラ・ボエーム』のミミ。この人もまた愛に生き儚くました(笑)。話し方、歩き方、ジェスチャー、服装、建物等にオペラを感じることがあります。それに、イタリア語って歌っているように聴こえるでしょ。―住吉さんもイタリアでは歌うようにお話されるのですか。いま話をしている私とは違うと思います(笑)。日本語を話す時とは声を出すところが違うし、発音も違いますから、自然と音楽のような流れになります。不思議ですね。―日本とイタリア。人気の作品って違いますか?素晴らしい作品はどの国も共通だと思います。ただ、オペラが生まれた国はイタリアですのでやはりオペラが身近にあるというか⋮。歩いていて、すれ違う紳士が口ずさんでいる曲が『リゴレット』の中の曲だったり。『トゥーランドット』の﹁誰も寝てはならぬ﹂はコロナ禍、よく歌われました。﹁勝つぞ!勝つぞ!﹂という歌詞があの頃の厳しい状況に合っていて、音楽から勇気をもらえたのかなとも思います。死んでしまいます。でも可哀想なだけではない魅力もあり、少ししたたかさもあり、現代の女性に近いかもしれませんね。沢山のプッチーニの魅力が詰まったオペラですが、恋の相手ロドルフォが歌うアリアは、イタリアチックな超高音が聴かせどころで、世界中のテノールが憧れる曲。私も個人的に大好きです。―多くの作品に出演され、ヒロインとして恋をしてきたと思います。好きな男性の登場人物は?難しいですね。オペラの中の男性はたいてい女性を不幸にしていますからね(笑)。『ラ・ボエーム』は芸術家を目指す若者たちが描かれた物語なのですが、詩人のロドルフォは輝いてみえるかもしれません。―住吉さんのキラキラ降る歌声を次に日本で聴くことができるのはいつでしょう。この秋には帰国し、また歌声を披露する予定です。皆様と会場でお会いできますように!撮影協力・風見鶏の館56

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