までは本当に時間がかかりましたね。絵本を描くというのはこんなに難しいことなのだと初めてわかりました。今も一冊絵本を描くのはとても大変です。そしてやりがいがあります。―『おへそのあな』は妊娠中にお腹の赤ちゃんに読み聞かせたくなるような絵本です。男親は、いざ子どもが産まれてくるまで子育てにあまり真剣になれないものですが、奥さん(絵本作家のあおきひろえさん)に「あなたも一緒に出産に参加してください」と教育され、親子学級やラマーズ法の練習に行き、出産に立ち会い。産まれる瞬間を見てとても感動しました。3人目は助産婦さんを呼び、自宅で出産したので、そのときは僕もお湯を沸かして、必死でたらいに入れたりしてたな。子どもたちはテレビでポケモン見てたけど(笑)『おへそのあな』は、奥さんと産まれてくる子どもに教えてもらったこと、感じたことを書かせてもらった絵本なんです。だろうと思い始めたんです。―絵本出版のチャンスはどのように訪れたのですか?僕が描いていた小さなイラストを見て、編集者の松田素子さんが「あなたは絵本を描けるんじゃないですか?」と声を掛けてくださった。まだ出版社も決まっていなかったのに、ありがたかったですね。でも、いざ絵を描くとなると、あれだけ絵本を描きたいと言っていたのに全然描けない。絵で語らなあかんけど、15見開きの間にストーリーのリズムを付けないといけないし、一冊描くのはかなり大変です。―デビュー作の『おじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃん』はいきなり壮大な物語でしたね。そんなつもりはなかったんやけどね(笑)。時間が遡る話なので、その表現を松田さんから何度も要求され、インターネットや携帯のない時代だから、図書館に行ったり、本を買って調べてた。誕生―『ぼくがラーメンたべてるとき』は、まさかあんな展開になるとは思いませんでした。そうでしょ?よく「騙された〜」って言われます。―隣の人や隣の国の人が何をしているかと、想像力を働かせることの大切さを教えてくれます。想像するのはとても大切なことで、想像したら、やったらあかんことを判断できると思うんです。今も戦争によって飢えた子どもたちの上に爆弾が落ちている。戦争を起こしている人は、「自分の身だったら」と想像もできないのかと思います。でも人間は誰しも狂気を持っているんです。狂気が出ないように日々気をつけなければいけない。それが優しさだし、憲法という大切な重しが必要なんです。絵や音楽、絵本は、そういう優しい気持ちを共有する力があると思います。平和は誰かが与えてくれるものではないので、日々意識をして行動していかなければ、ぼさっとしていると、戦争は繰り返されますから。大変さを思い知ったデビュー作想像するのはとても大切なこと26
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