ていいことと、やっちゃいけないことの区別によって自由は得られることを僕の無意識は恐れているのかもしれない。そう考えると旅そのものは破壊と創造のヒナ型のように思う。「旅は自分から離れる」と言った人がいたが、僕は、その自分から離れたいのである。自分からある意味で死である。常に変化を繰り返していなければ逆に落ち着かないのである。だから作風は常に変化している。従って、作品の主題も様式もない。そんなものは自分を縛り付けるものと考える。主題も様式もないのが自分のスタイルで、簡単に言えば、なんでもありである。やっ離れることを恐れることは自分の自我の中に自分を閉じ込めることではないだろうか。旅をすることで、どんどん自分から離れればいい。想像も同じ行為で、最初は自分から入り、やがて自分から離れて普遍的な自分になることである。旅はそんなことを肉体を通して学ぶチャンスである。まあ、この展覧会をそんな視点から見ていただきたいが、すでに5年前に終わってしまった。いつか再び、形を変えてリバイバル展を計画してもらいたい。「ヨコオ・ワールド・ツアー」展 会場風景 スーツケース美術家 横尾 忠則1936年兵庫県生まれ。ニューヨーク近代美術館、パリのカルティエ財団現代美術館など世界各国で個展を開催。旭日小綬章、朝日賞、高松宮殿下記念世界文化賞受賞。令和2年度 東京都名誉都民顕彰ほか受賞・受章多数。横尾忠則現代美術館にて開館10周年記念「横尾忠則 寒山拾得への道」展を開催中。3月に小説「原郷の森」(文藝春秋社)が刊行された。http://www.tadanoriyokoo.com17
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