ては一番手っとり早い手段であったような気がしたのだろう。旅は何が起こるかわからない。僕の作品は無計画に近い。予定調和的にことが運ぶことで安心は得られるが、偶然の出会いによって思いもよらないことに出会う。以前、三島由紀夫さんは僕のことをアプレゲールと呼んだ。アプレゲールとは、無計画的に行動する若者のことらしいが、三島さんは「横尾君のように無計画な人間は危なくてしょうがないよ」と言ったことがある。三島さんは、自らの行動の全てを計画的に行った。手帖にはその行動のひとつひとつがメモされていた。僕に言わせると芸術の醍醐味は偶然というチャンスオペレーションによって生きる美学である。旅もそういう意味では偶然の連続で、ある意味では異次元への参入のような恐れを伴うが、その恐れが僕には創造の源泉になるのである。そう考えると、読書などの精神的な旅よりも肉体を伴った旅の方がはるかに刺激的である。僕にとって変化のない日常は「ヨコオ・ワールド・ツアー」展 会場風景16
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