KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年5月号
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簡単に見つけることができます。胃や大腸に異常がないのに下痢や腹痛などの症状が出ている場合はクローン病の疑いがあり、カプセル内視鏡など特殊な検査で小腸内の異常を探します。―原因は。まだ特定されていませんが、潰瘍性大腸炎は常在する腸内細菌のバランスが崩れることが原因の一つと考えられます。また最近は、自己抗体と炎症の関係も解明されつつあります(星先生コメント参照)。小腸に病変を伴うクローン病では、小腸が食べ物を吸収し不要なものを排除する役目を果たす役割をもっていること、また入院患者さんでは絶食を行うことによって炎症が落ち着くことが分かっていますので、普段の食事が影響していると考えられます。本来は炎症を起こさない食事の中に含まれているある種のタンパク質や脂肪に対して自身の免疫担当細胞が誤って炎症を起こしてしまっていると考えています。―治療法は。最近急速に新しい薬が開発、承認されています。遺伝的要素とさまざまな後天的要素が組み合わさって発症する病気なので、患者さん一人一人の炎症のタイプを判断し、それぞれに合う薬を選び寛解へと導きます。患者さんの人生がこの病気によって大きく変わってしまわないようにコントロールするのが私たち専門医の役目だと思っています。―どうすれば予防できるのでしょうか。予防する方法はありませんので、できるだけ早く診断・治療を行う必要があります。診断がついた時点で発症してから半年、1年…と経過しているだろう患者さんがおられます。潰瘍性大腸炎の場合は大腸がん発症の要因にもなります。発症を抑えるためには薬での適切なコントロールが重要です。他の病気と同じで、つらい症状は我慢せず早めに受診して検査を受けることをお勧めします。73

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