東京、大阪、神戸など大都市で病床のひっ迫が起こりやすい理由がお分かりいただけると思います。─病床数の問題以外に、病床ひっ迫の原因はありますか。橋本 高齢の患者数が多いことが、ひとつの原因になっていると思われます。虚弱な高齢者は若年層より回復に時間がかかり長期間病床を埋めてしまうので病床の空きがなかなか出ません。昨年の第5波では比較的若い層の入院が多かったので病床の回転が良く病床のひっ迫はありませんでした。さらに、病床は空いてもスタッフが感染したり、保育所のクラスターにより子どもを預けられなくなったりなどで人員不足がおこり、受け入れができない場合もあります。─コロナ以前は病床の削減や効率化を追い求めていましたよね。橋本 ここ20年間、医療費削減のため病床を施設に転換するという国の方針により、療養病床、有床診療所を中心に毎が公的病院なので政府がコロナ患者用に転用を指令するなどコントロールしやすいのです。─今回のコロナ禍では、地方より大都市部の方が患者の受け入れが大変だったように思いますが。橋本 地域によってばらつきがありますが、感染者の多い大都市部では人口あたりの病床数が少ない傾向があります(図4)。─日本は、コロナ患者への対応の鍵となる急性期向けの病床数が少ないのですか。橋本 人口あたりの病床数をみると、カナダ、フランスよりは多いのですが、リハビリ病床を加えるとドイツより少ないのが現状です(表1)。ですから、日本の病床が多いというのはコロナ患者受け入れに関しては必ずしも当てはまりません。しかも、カナダやヨーロッパでは病床の多く図3)日本の病床が欧米先進国と違う点①精神科病床が約32万6千床と多い人口1,000人当たり2.3床(アメリカは0.3床)②高齢者用の療養病床が約31万床と多い人口1,000人当たり2.3床(アメリカは0.2床)③日本独特の有床診療所(産科診療所など)が約9万床これら以外にも結核・回復期などの病床があるがコロナ患者の受け入れは不可これらが日本の病床数約160万床の実態出典:厚労省医療施設調査・病床報告(令和元年)70
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