つ喜んで引き受けた」と打ち明ける。監督、俳優として旧知の仲。2004年、グリコ森永事件をモデルに描いたサスペンス映画「レディ・ジョーカー」で監督を務めた際、松重を配役して以来、20年近く信頼関係を築いてきた。「長年、映画監督を続けてきたからこそ、この配役、スタッフで撮ることができた作品と言えるかもしれませんね」と、平山監督はしみじみと語った。構想10年でもあきらめない1950年、洞海湾に面した港町。福岡県北九州市戸畑で生まれ、育った。地元の県立戸畑高校を卒業後、上京し、日本大学芸術学部放送学科へ進学する。「映画学科ではなかったのですか?」と聞くと、「高校時代、深夜ラジオのディスクジョッキーに憧れていましてね」と笑った。大学卒業後は、「大好きう。10年前も今も、小林さんは私が思い描く芙美像のまま。逆に10年もかかったから、よかったのかもしれませんね」3年前にメガホンを取った話題作「閉鎖病棟―それぞれの朝―」では、厳格な看護師長役に小林を指名している。ただ、このときは、「絶対に患者に優しくしないで下さい」と役作りを依頼している。今作とは真逆で、彼女の〝魅力的な笑顔〟を封印させたのだ。芙美と運命的な出会いを果たす吾郎を演じるのは日本を代表する名バイプレーヤー(脇役)の松重豊。「芙美との恋が突然、始まる吾郎…。自然体で吾郎を演じることができる俳優は、松重さんしか思い浮かばなかった」と平山監督は配役の理由を語る。この指名に対し、松重は「俳優としても実生活でも恋愛とは無縁という自覚を持っていたが、新たな恋路に旅立つ期待と不安を抱きつ車に乗って海岸線を走っていると、突然、隕石が落ちてくる…。町へ引っ越してきた吾郎(松重豊)との〝運命的な出会い〟など、この日を境に、芙美の周りで奇跡が起き始める。「実は脚本の構想は10年以上も前に、すでにあったものなんです」平山監督はそう打ち明けると、こう続けた。「隕石に遭遇する確率は、1億分の1といわれています。この事実を聞いたとき、実は〝意外と結構、高い確率だな〟と驚いたんです。もっと、低い確率だと想像していたから。これなら、身近でそんな人がいてもおかしくないでしょう」と苦笑した。大林宜彦監督の40年前の名作「転校生」(1982年)で、16歳のときに主演デビューを果たした小林を「芙美のイメージにぴったりだと感じ、芙美役をお願いしました」と言う。「彼女は年を重ねても変わらぬ〝永遠の少女〟のよ26
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