KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年4月号
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も比較的よく分かっています。2型糖尿病になりやすくなるとされる50以上の遺伝子が特定され、環境要因との関係も解明されつつあります。一方、1型糖尿病の体質要因は、2型糖尿病ほど詳しくは解明されていませんし、環境要因についてもよく分かっていません。―2型糖尿病の環境要因にはどういうものがあるのですか。ホルモンの一種であるインスリンは、筋肉や脂肪、肝臓などにあるインスリン受容体に到達して効果を発揮し血糖値を調整します。過食、肥満、運動不足などの生活習慣はインスリンを効きにくくします。インスリンが効きにくくなると、私たちの体はインスリンをたくさん分泌して血糖値を下げようとしますが、どこかの時点でこのような代償が破綻すると、血糖値が上がり糖尿病が発症します。―日本では糖尿病患者さんが増えているのですか。生活習慣の変化により国民全体の〝インスリンの効きにくさ〟が増し、糖尿病患者さんは増えてきました。日本人をはじめとした東アジア人種は、2型糖尿病など肥満に関わる病気になりやすい傾向があります。食べたものはインスリンが働いて吸収され身に付いていきます。欧米白人は、インスリンを出す能力が東アジア人より高いため、食べたら食べるだけ太ることができます。一方、インスリンを出す能力が低い東アジア人種は、食べ過ぎると、極端に太る前に糖尿病になってしまいます。―糖尿病の治療法は進歩しているのですか。私が糖尿病の診療を専門的に開始した30年ほど前に比べると格段に進歩しています。当時、飲み薬は2種類しかなかったのですが、今では異なった作用メカニズムを持つ9種類の飲み薬がありますし、GLP-1という新しいホルモンも治療に使われるようになってきました。1型糖尿病の治療法はインスリン補充ですが、インスリン製剤が進歩しただけでなく、インスリンを補充するための機器も進歩し、ポンプ型のインスリン注入器も広く使われるようになってきました。さらに24時間に亘って持続的に血糖値の変化を知ることができる血糖モニター装置も開発されています。最新のポンプ型インスリン注入器は血糖モニター装置と連動し、血糖値に応じてインスリン量を調整してくれます。もはや、人工臓器に近いと言ってもいいですね。誤った理解に基づく誤った見方がある―糖尿病の合併症とは。「3大合併症」は糖尿病特有の合併症であり、神経障害、網膜症、腎症があります。また、心筋梗塞や脳梗塞など、動脈硬化に基づく合併症は糖尿病に特有ではありませんが、糖尿病によってその発症の危険性が高くなります。がんや認知症、サルコペニアなども、糖尿病により発症リスクが増加することが知られています。85

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