KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年4月号
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は行動に移していました。ある時、美術館から「空間全体を抗菌できないか」という相談を受け、研究開発を行っていました。程なくコロナが発生。美術館が次々と閉鎖され、売上も6割減までいったそうです。そこで空間の抗菌サービスを近鉄電車に売り込んだところ見事受注。その実績が認められ、国内55空港にあるJALの搭乗カウンターや東京オリンピックの国立競技場などにも採用が決定。面白いのは、表具業には徒弟制度があり、兄弟子という存在が全国にいるそうで、これらの大プロジェクトを彼らと一緒に実現しているのです。まさに家業が持つ無形の経営資源をフル活用して新たな領域に展開した事例です。沼部 すごい、夢物語のよう! 山野 彼は大学で建築学を学び、卒業後、建築会社に勤めた後、家業を継承。空間を抗菌する案は、メンテナンスという家業の強みとなるならば、お酒を飲みながらでもOK(笑)。しばりなく案を出せる環境にしなければ、独創的なアイデアは生まれてこないと思いますね。山野 不確実で先が見えない今の時代にあった考え方だと思います。世の中には根拠のないルールが多すぎる。時代は常に変化していますからね。沼部 アトツギのサクセスストーリーを教えてください。山野 来年で創業100年を迎える社員10人ほどの表具業のアトツギ。お寺に収蔵する美術品のカビ対策なども行っていましたが、日本の住宅から和室がどんどんなくなっていくことに強い危機感を感じていました。100年培った表具メンテナンスの技術を他の領域に展開できないか。そう思って回遊魚のように、いろんな業界に顔を出して情報収集をして家業を高度化して継ぐアトツギの成功事例全国のアトツギベンチャー社長がメンターとなって新規事業の相談にのるhttps://atotsugi-u34.jp/77

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