KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年4月号
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沼部 中小企業経営者が高齢化し、後継者不足が問題視されています。山野さんは事業承継のなかでも親の会社を継ぐ、同族承継のサポートにたずさわっておられますね。家業を継ぐことと、ベンチャーってつながらないイメージがあるけれど、「ベンチャー型の事業承継」とは?山野 家業をベースに新規事業開発を行うこと。若手後継者が、親から受け継ぐ経営資源を活用し、新規事業や業態転換、新市場開拓など、新たな領域に挑戦し、永続的な経営を実現することをめざしています。私たちは、親と同じスタイルでそのまま家業を継ぐ事業承継とは異なる、ベンチャー型の事業承継もあることを若い世代に伝えたいと考え、サポートを行っています。沼部 どのような事業活動を行っているのですか。山野 親が事業を営む若手後継者を対象に、新規事業化までのフォローアップを目的とした「アトツギU34」というオンラインサロンを運営しています。ほかにも全国の自治体や企業から依頼を受けて、事業開発の講座やイベント研修なども実施しています。入会時の年齢を34歳未満に設定しているのが特徴です。沼部 なぜ、34歳未満?山野 事業継承者が30代前半までならば、親世代は50代から60代の現役社長。親世代が元気なうちに、本業で利益が出ているうちに、次の20年の種を蒔く。そのために一日でも早くスタートしようと、入会時の年齢に制限を設けました。現在、全国で800人ほどのメンバーが在籍し、業界ごと、地域ごと、テーマごとに、毎晩オンラインでミートアップが行われています。以前はオフとオン、両方で実施していたのですが、コロナ禍でオンラインが中心に。地方によっては会員が少なくオフラインができないこともあった地形学的な課題をこえて、全国の皆が平等に参加できるようになりました。沼部 どんな業種・業態の人がメンバーですか。山野 レガシー産業の方が多いですね。釣り具店、クリーニング店、金属加工業とか。「家業でワクワクするビジネスがしたい」「家業を継ぐべきかどうか迷っている…」という中小企業の承継予定者達が出会い、チームリーディングや親父の攻略方など、様々な課題を話し合います。沼部 都会の大学に通い、活躍していた人が地元に戻り、やりたくない家の商売を継がなければならない。一見するとネガティブに思えるけれど、受け継ぐものがないサラリーマン家庭に育ち、0から起業した私のような立場からすれば、親がつくった宝物的な資源があるのは大家業のリソースを活用したベンチャー型の事業承継解の受動ではなくメンバーが自走する75

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