KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年4月号
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夜明けの海に輝く 〝神戸産しらす〟明石海峡を漁場とする長田港を基盤に漁業を営む、尻池水産代表の尻池宏典さん。代々続く漁師家系で生まれ育ち、神戸の海を見つめて来ました。「しらす漁は5月頃に解禁されるので、まさにこれからがシーズン。しらすは神戸港の沖合や陸沿いでもよく獲れるんですよ」。3船1組で行う船曳網漁という方法を使い、午前3時ごろに出港。多い時では1日4~5トンもの量が水揚げされ、獲れたてのしらすは垂水漁港へ運ばれてセリに出されます。実は兵庫県のしらすの水揚げ量は全国でもトップになるほど。そんな水産県の中でも神戸は魚がよく獲れる、漁業が盛んな街でもあるのです。それにもかかわらず、〝神戸産しらす〟という言葉には馴染みがありません。法的な表示ルール上のために神戸沖で獲れた魚は兵庫県産として流通されますが、「同じ神戸沖で獲れたしらすでも、たとえば淡路の漁師は〝淡路生しらす〟としてブランド力を上げていたり、和歌山の業者は釜揚げで東京に大量に出荷したりとそれぞれに努力されています」と尻池さん。「どうしても神戸の海には工業的なイメージがあるのかもしれませんが、しらすがよく育つのは栄養豊富な大阪湾の奥の方、神戸空港の界隈なんです。全体的な漁獲量も減る中で、漁師が立ち上がり、神戸産のしらすや魚のことをまずは地元の人に知ってもらわないといけません」そこで神戸産しらすの差別化を図ろうと立ち上げたばかりのブランドが『神戸夜明けのしらす』。日の出からしか網入れが許されない大阪や淡路島の船に対して、神戸の漁師だけは午前4時から網入れが可能。エサを食べる前の夜明けのしらすは透明度が高く、茹でると白くふっくら。神戸の漁師しか提供できない夜明けのおいしいしらすを地元の人にこそ食べて欲しいと尻池さんは話します。『実は神戸は豊かな漁場だった』しらす以外にもたくさんの魚たちが泳ぐ神戸の海。その豊かな水質の理由とは?「海の水が蒸気となって、六甲山系に雨を降らせます。その雨水は栄養豊富な山の腐葉土で濾過されて、ミネラル豊富な山水として今度は川や地下水経由で海へ運ばれるんです」。さらに神戸沖で発生する潮の流れも相まって、神戸沖では山水と潮が合流。「プランクトンが育まれることで栄養分が豊富な海になり、魚が集まります。極端な話、透き通ったキレイすぎる海だと魚は全然育たないんですよ」こうした豊かな海は神戸の東側にも広がり漁師の数も多かったものの、沿岸部の埋め立71

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