一方で写真ではブラックミュージックの雑誌のグラビアの依頼が入り、レイ・チャールズやジェームス・ブラウンも撮ったことがあります。それでミュージシャンのジャケット撮影とかを手がけていたんです。でも、これでご飯を食べるのは大変で。そんなタイミングでたまたま、青木功さんが日本人初の海外ツアー優勝と出ていた新聞を見たら、その下にゴルフカメラマン募集の記事が出ていて、面白そうだなと。ゴルフやったことないけど、舞台撮るのとゴルフ撮るのは似ているんじゃないかと勝手に思い込んで。─ゴルフ撮影の面白いところはどんな点ですか。宮本 野球やサッカーが撮影場所を制限されるのに対し、ゴルフはロープ際というルールはありますが比較的自由に動けます。つまり、いろいろな光を自分で選べるんです。─渡米したのはなぜですか。宮本 海外へ行けば本場のゴルフも撮れるし、音楽も好きだったので本物のライブも観られると思ったので。実は数奇なことに、日航ジャンボジェット事故に遭遇した便に乗る予定を直前に変更したんです。渡米に迷いもあったのですが、助かった命だしこれからは好きなことやろうと思ったのも大きかったですね。次の100年に 残る仕事─撮影してきた中で印象深いコースはどこですか。宮本 ゴルフ発祥の地、セント・アンドリュースですね。15世紀、重機がない時代に自然の地形やこぶを生かしてつくられたコースがそのままで残されていて、ゴルフという魅力ある、中毒性のある〝遊び〟がこうやって生まれたのだなと。背景のまちなみも守られ、オリジナルの景観が大切にされているんです。─鳴尾ゴルフ倶楽部100周年の写真集を撮影されました。宮本 ゴルフ場は自然とともに変化していきますし、道具も進化していますので、コースも変わっていきますが、次の100年の頃に僕の写真が残っていくじゃないですか。4年がかりの撮影でしたが、そういう仕事に携われるのは幸せなことです。─廣野も素晴らしいですよね。宮本 揺るぎない名コースです。鈴木商店のロンドン支店長を務めた高畑誠一が、イギリス人でアメリカを中心に活躍していた設計家、チャールズ・ヒュー・アリソンに依頼したんです。アリソンは廣野に来て設計したあと、鳴尾や茨木(カンツリー倶楽部)のコース改修も手がけました。アリソンのコースはバンカーで有名なんですが、土地に応じて18ホールのルーティングを組むことが上手くて、苦あり楽あり、抑揚がまるで交響曲のようです。だからプレーすると心に残るんですよ。これからアリソンの歴史が解明されると、世界から廣野の価値がさらに注目されるのではないでしょうか。世界中のコースをいろいろ見てきましたけれど、そのレベルは高いですね。 廣野の90周年記念写真集も撮影しましたが、渡辺節設計のクラブハウスは良いです。空間と光の採り方に特徴があり、光が曲線美を際立たせています。29
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