KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年3月号
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元町映画館神戸市中央区元町通4-1-1266席+1(車椅子)TEL.078-366-2636https://www.motoei.com/presents2015年、神戸で生まれた映画『ハッピーアワー』を1ヶ月間上映して以来、元町映画館の年末は『ハッピーアワー』一挙上映が恒例になっている。年内最終営業日はキャストやスタッフたちが集結した舞台挨拶も行い、観客の皆さんと共に笑顔で一年を締めくくっているのだ。そんな特別な作品のスタッフ・キャストが再結集し、さらに成熟した「わたしたちと地続きの物語」が誕生した。パートナー、宗一朗の連れ子、蘭が留学し、宗一朗(田辺泰信)からも別れを切り出され、喪失感に苛まれながら一人、家を出る春(川村りら)。春の弟、毅(小林勝行)の音楽活動を献身的に支え、精神的な不安を抱えながら育児に励む妻の美香子(出村弘美)。再び子どもを育てたいと強く願う春の前に、記憶喪失の青年(川村知)が現れ、美香子も毅に対して言えない思いが積み重なっていく。30代、40代が向き合うパートナーや子どもの問題にフォーカスし、その葛藤や後悔、憤りをさらけ出す姿に、観る者も自身の体験を重ねたくなるのではないか。共同脚本の川村と試行錯誤しながら作り上げた野原位監督の劇場デビュー作は、不器用で傷だらけの人生でも、最後は全てを肯定する強さが見えた。 (江口由美)vol.3『三度目の、正直』~今月の1本~上映スケジュールはコチラ▶人生全てを肯定する強さ〈その他の注目作〉3月11日まで「特集上映|タル・ベーラ伝説前夜」を開催中。傑作『サタンタンゴ』以前の日本未公開作を3本一挙上映します。■『三度目の、正直』“Third Time Lucky”(2021年 日本 112分)監督・脚本・編集:野原位(『ハッピーアワー』『スパイの妻』共同脚本)脚本:川村りら出演:川村りら、小林勝行、出村弘美、川村知、田辺泰信、謝花喜天、福永祥子、影吉紗都、三浦博之元町映画館にて3月12日(土)より3週間上映73

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