KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年3月号
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 『アリス』というより、まずはジャバウォック、だったんです。“悪意の象徴”のようなものを探していて…。『モモ』の灰色の男たちはどうだろうか?とか。アリスについては以前ちょっと調べたことがあって、ジャバウォック(『鏡の国の~』に登場する詩の中の怪物)の言葉の成り立ちがぴったりだ!と。そこからアリスの世界に行きついた感じですね。|子どもの頃の読書体験は作品づくりに影響していますか。 『モモ』は、私が世界で一番好きな児童書なんです。小学生の頃、学級文庫に置いてあって、のめり込んだのが『モモ』と岡田淳さんの『二分間の冒険』。その“二大巨頭”は今も私の本棚に並んでいるし、私の作風ってそこからできてるって思っています。|子供の手の届く場所に、本を置くことは、やはり大切なことなんですね。 私の親はよく図書館に行く人だったので、ごっそり借りて帰って家で読んでたし、小学生になるとお小遣いで古本を買って読んでいました。 その後は、乱歩やホームズなどのミステリーとか、いろいろ読み、ライトノベルに行き着く。ライトノベルって難しい言葉なんですけど、入り口は、わりと何でも書いていいジャンルだったので、多種多様だったんです。 私は当時からストーリーよりも文体が好きで、文体で面白みを作ろうと思っているのって、ライトノベルか純文学しかなかったんですよね。今も、私が書く上での優先順位は、まず“文体”で、気持ちよさとか誠実さみたいなもの。登場人物とストーリーはそれを支えるためのものというのが私の本来の骨格です。 須磨のホットドッグ屋と 象のいなくなった檻。|神戸市民としては、作品の中に実在のお店がでてくるのがうれしいです。 須磨のお店は子どもを連れてテイクアウトしたときに、本当にカントリーマアムをくれて(笑)。象がいなくなった展示がある動物園も姫路にあるんですよ。普段から「これ使えるな」と一度思っておけば、文章の流れから自然に出てきたりします。|メモを取ったりはしないのですか。 そうですね。今朝は出かけに、「コインランドリーの両替機をこじ開けてお金が盗まれた」というニュースがあったので、被害額だけメモをとりました。(笑)。そういういかにも忘れそうなのだけとりますね。|いつか作品にそのお話が出てくるのが楽しみですね(笑)。今後はどんな作品を構想されていますか。 今は、書店に併設されたカフェを舞台にした短編をそのカフェで実際に書くという連作を行っていて、ここUmieの大垣書店さんが第二弾です。短編は息を止めて一気に書く感覚が気持ちいいし、長編は、溺れる前提で、いつももがきながら書いています(笑)。72

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