KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年3月号
70/128

会えない両親と 父親になった自分。|今回の作品はどのように生まれたのですか。 実は、担当編集者さんからお話をいただいたのは、11年前なんです。僕が角川スニーカー文庫で連載を始めた頃で、他社から声をかけていただいた初めての方でしたから、「いつか一緒に」とずっと思っていました。|11年とは、熱烈なラブコールですね。 最初の打ち合わせで「兄弟を題材にした小説はどうか」と提案を受け、原型はそこで生まれました。ちょうど子どもが生まれた頃で、親の視点が入った方が素直に書けるなと思い、家族ものになっていったのが、成り立ちです。|若者を主人公にしたファンタジー小説から「家族の絆」の物語。何か心境の変化があったのですか。 やはり子どもが生まれたのが大きいです。あとは、コロナ禍で実家の両親に会えなかったのもあるかもしれない。 基本的に私は理想だけを考えて生きていたいタイプなのですが、ここ一、二年、真面目に社会と向き合わざるをえなくなった。子どもの未来とか両親の老いとか…。結局、私は「自分VS理想」の小説をずっと書いていたんだけど、どこかで中間項目としての現実のバランスを重くしていく必要が生まれたのかなと思います。|シングルマザーの愛と息子・冬明、亡夫の連れ子・楓の、微妙に保たれた三者の関係が繊細に描かれていましたね。 今の私がそうなのもあり、親と子の関係性が私の中の主眼でした。私は以前から里親制度に興味君の名前の横顔「物語は、埋もれた欠片(ピース)。パズルゲームの答えを必死で探す」KOBECCOおすすめの一冊アニメ化、実写映画化もされた『サクラダリセット』シリーズなど、ベストセラーを生み出してきた河野裕氏。新作『君の名前の横顔』で描いたのは、血のつながらない家族の絆。現代社会の生きづらさと幻想世界を巧みに織り交ぜて、“家族”の意味を問うた作品で新境地を拓く、河野氏にお話を伺った。1,700円+税 ポプラ社70

元のページ  ../index.html#70

このブックを見る