KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年3月号
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|兵庫県立芸術文化センターでは、チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」。辻井さんにとってどんな曲ですか。 母のお腹にいる時から聴いていて、その頃から好きだったようです。ピアノを始めてからは、早く弾けるようになりたい!と憧れていたので、初めてオーケストラと演奏した時の気持ちをよく覚えています。本当に、本当に、すごく嬉しかったです。これまで数えきれないくらい弾いていますが、ホールやピアノ、一緒に演奏するオーケストラ、指揮者によって音も弾き方も変わるので、毎回新鮮です。同じ曲を弾いていても同じ演奏になることはないので、弾いた数だけの思い出があります。 佐渡裕さんと録音したことは嬉しい思い出です。CDという形に残るお仕事は、コンサートとは違う嬉しさがありました。佐渡さんとは小さい頃に出会ってから、変わらず仲良くしてもらっています。いつかまた共演できたらいいな、と思っています。|ザ・シンフォニーホールでは、ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」ですね。 2009年のヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールの決勝の舞台で演奏した曲。人生の転機となった曲です。 ラフマニノフは、交響曲第1番の初演で大失敗して作曲ができなくなり、数年後、この協奏曲第2番で復活したそうです。そのエピソードを知ってから、この曲への理解が深まった気がします。僕は特に大失敗はしていないのですが(笑)、この曲で人生が変わったことで気持ちが重なっていて、弾く度にいろんなことを考えます。これからもずっと大事に演奏していきたい特別な曲です。|休日は、音楽、聴きますか? もちろんです。最近は、ジャズピアノを聴いていることが多いかな。ビル・エバンスが、すごく好きです。なんか好き。魅かれます。なんでだろう。音色がキレイで、曲を聴くという前に、音を聴いているだけで心地よいです。 小曽根真さんのピアノも聴きます。コンサートでご一緒した時には多くの刺激をもらいました。演奏が魅力的で、いつも楽しい方。すごいなぁと思うし、作り出す音楽だなぁと思います。 実は、ジャズの道に進もうか迷ったことがあるんです。曲を作ることが好きなので、音楽を作り出す面白さがあるのはジャズだなぁと思って。悩みに悩みましたが、最終的には自分にあっているのはクラシックだと思いました。西宮、大阪での演奏曲目のはなしピアノのはなし、あれこれ21

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