KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年3月号
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美術家 横尾 忠則1936年兵庫県生まれ。ニューヨーク近代美術館、パリのカルティエ財団現代美術館など世界各国で個展を開催。旭日小綬章、朝日賞、高松宮殿下記念世界文化賞受賞。横尾忠則現代美術館にて4/9より、開館10周年記念「横尾忠則 寒山拾得への道」展を開催予定。3/24、小説「原郷の森」(文藝春秋社)が刊行される。http://www.tadanoriyokoo.comす。海外が評価して初めて国内の評価が定まるという、何ともおかしな構造が日本にはあります。身内を過小評価するその根源は一体何だと思いますか。本展の僕のポップ作品(ピンクガールの一連の作品)も発表当時は全く認めようとはしませんでした。むしろ全否定です。僕に限らず、他の日本のポップアーティストも同様です。海外のお墨付きがついて初めて日の目を見るので「横尾忠則展 わたしのポップと戦争」2016年 横尾忠則現代美術館す。何とも情けない話です。他のジャンルでも似たようなことが起っているのではないでしょうか。本当に日本人を止めたくなることが何度もあります。まあ、幸い神戸の僕の美術館では、そのような偏見のない学芸員諸氏によって頑張ってくれています。時には展覧会の枠をはみ出したような企画を平気で行ってくれています。中味(横尾の作品)より企画、キュレーションの方が面白い場合があります。芸術は常識に抵抗することで、進歩します。僕は学芸員の諸氏に常に軌道を逸したようなキュレーションをお願いしています。そのためには学芸員の生き方がそのまま反映します。型にはまった常識的な生き方からは何も新しいものは生まれません。時にはハメをはずして、作家がびっくりするような発想の展覧会を創造してもらいたいと常に願望しています。そのためには神戸という地域を越えて、世界的視野に立って、新しい展覧会を計画してもらいたいと思っています。19

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