KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年2月号
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炎症が強くなり痛みが強くなると、何も喉を通らなります。すると口の中に菌が増えてさらに炎症が強くなりやすくなったり肺炎になりやすくなったりします。肺炎のリスクを下げ、食べられる状態にして体力を維持し、その結果として治療の成功をサポートするのが支持治療です。―具体的には。最も分かりやすいのが「痛みをやわらげる」治療で、我々の一番の武器は鎮痛薬(痛み止め)です。ただし「痛いのなら鎮痛薬を」という乱暴な使い方をすると、適切な鎮痛が得られないだけでなく、不必要な副作用に患者さんをさらしてしまいます。どういう原因で起きているかを判断し、数多く種類がある中で、それに合わせた鎮痛薬を選択して副作用のリスクを最小限に抑えつつ、より高い鎮痛効果につなげます。また病気の治療薬など他の薬剤との飲み合わせや患者さんの肝臓・腎臓の機能によって避けた方が良い薬剤もあり、状況に合わせた薬剤選びが大切です。―心理社会的サポートについては。今後の治療方針や治療後の生活をどうしていくかについての意思決定のサポートと環境を整えるお手伝いが、大事にしている役割の一つです。主治医の先生からの説明や膨大な情報を理解できているのか、率直な疑問や本心からの希望をお話しできているのかについて、私たちがサイドワーカーとして関わることで確認し、気持ちの整理のお手伝いをし、足りない部分があれば主治医の先生にフィードバックして再度説明してもらいますまた、「治療の苦痛には耐えられない」「治療は自分の価値観に合わない」という場合でもそれぞれの考え方を認めて、主治医の先生と対等に話し合える環境をつくります。 「治す」ことが難しい場合でも、この先続く人生をより良く過ごすためにサポートするのも役目です。―先生は総合内科の専門医でもあるのですね。緩和医療学はまだ歴史が浅く、私の場合は内科から入っています。抗がん剤や手術などについて知識は持っていますが、実際に技術を持って治療を進めるのは専門の先生方です。腫瘍内科や外科、放射線科などの先生へと連携していく上で、総合内科の知識が役立ちます。患者さんの質問に「それは専門外で分かりません」などと答えていたのでは、私たちが存在する意味がなくなってしまいます。いったん我々で受け止め、一般的な情報は適切に我々からも提供しつつ、より専門的な情報が必要な場合には主治医である専門家からの説明につなげる、という動き方をしています。緩和支持治療科には内科の他にも、外科や麻酔科などの専門分野をバックグラウンドとして持つ先生方もおられ、それぞれが幅広い知識を持ち緩和医療専門家として集まっています。―「緩和支持治療科」という独立した診療科を開設しているのは先進的なのですか。全国的に見ると、基本的にはそれぞれの専門の仕事を普段88

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