KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年2月号
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放射線治療をフルラインナップし、﹁切らずに治せる治療﹂をできるだけ広く提供して患者さんの負担を軽くしようと﹁低侵襲﹂という言葉を取り入れました。今でこそ知られるようになりましたが、当初は﹁何をされるの?﹂と患者さんに恐れられました。怖そうな言葉ですからね︵笑︶。―最新鋭の治療機器を使う放射線治療なのですね。 発展し始めていた強度変調放射線治療﹁IMRT﹂や定位放射線治療﹁SRT﹂を行う上で最も有効な組み合わせと考えられた最先端の専用装置を各₁台と汎用装置1台、内訳は全国₁号機﹁トゥルービーム﹂、兵庫県内₁号機﹁サイバーナイフ﹂と﹁トモセラピー﹂計₃台を導入し、どの部位のどんながんにも対応できるよう準備しました。―そして︑藤井先生が病院長になられたのですね。 放射線学会の理事長を務めておられた、当時の病院長・杉村和朗先生から﹁一緒に教室を盛り立ててくれないか﹂と声をかけていただき大学に戻りました。先生の下で仕事を始めて12年がたつうち、がん医療センターの構想が進み、放射線科教授の杉村先生、そして私も准教授として会議メンバーに加わっていました。﹁センターの病院長﹂というお話を頂き、﹁荷が重すぎる﹂とお断りしたのですが、周りを見回すといつの間にか私が杉村先生の下では最年長。﹁やらせていただきます﹂とお返事し、それだけでも不安なのに、当然、杉村先生が就かれると思っていた理事長も大学関係者の兼務は法律上できないということで私が務めることになり⋮戸惑いながらのスタートでした。―振り返っていかがですか。 一言でいえば﹁山あり谷あり﹂。医療関係者でも腫瘍の治療は﹁手術が一番﹂﹁切らずに治す治療で根治ができるのか?﹂という捉え方をされる先生方が多い中、全国的にも例を見ない﹁手術室を持たないがんセンター﹂として開院しましたので、私たちの思いがなかなか伝わらないこともありました。一つひとつ実績を積み重ね、次第に理解していただけるようになりました。また患者さんからも﹁お陰さまで治療がうまくいきました﹂という声を頂くことも多くなり、さらに口コミで当センターを選んでいただく患者さんも増えてきました。―必ず﹁切らない治療﹂を選ぶというのではないのですね。 もちろんです。あくまでも患者さんにとって最良の治療法を見つけます。例えば胃がんや大腸がんに放射線治療は不向きですから、最も適している﹁切る手術﹂をお勧めします。私たちの独断にならないよう開院以来、週₁回、神戸大学の外科系診療科外来を非常勤医師で開設してもらい、食道胃腸外科、肝胆膵外科、泌尿器科、耳鼻咽喉頭頚部科、脳神経外科を網羅し、ほとんどの場所のがんに対して手術という治療手段も選べる体制を取っています。ただし、無菌室が必要な血液のがんには対応はできません。―紹介状が必要なのですか。 ﹁がんセンター﹂というと﹁紹介状を持って治療のために受診する﹂というイメージを持たれるかも知れませんが、当センターは紹介状なしでも、誰でも受診できる医療機関です!54

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