KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年2月号
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鈴木監督が考える 「フランツ・シューベルト」―突然ですが、シューベルトってどんな作曲家ですか。学校では歌曲王と習いましたね。歌曲を多く作ったのでそう呼ばれています。教科書に載っている『魔王』も歌曲です。シューベルトの代表作の一つで、ダヴィンチで言うとモナ・リザみたいなものです。でもね、本人は実はオペラを書きたかったそうです。交響曲も室内楽曲も素晴らしい作品を多く残しているけれど、オペラは上演されていません。31歳で亡くなっているから時間が足りなかったのかもしれませんね。シューベルトは、ベートーヴェンに傾倒していて、自分がベートーヴェンの後継者たらんと考えていたのです。だからシューベルトの初期の作品にはベートーヴェンを感じる部分がありますね。―ベートーヴェンを感じるバロック、古典派、ロマン派…。習いましたよね。そこに壁があるわけではありませんが、作風に境目はあります。私は、そういう境目辺りにある音楽に惹かれるのです。古典派の終わりからロマン派の初めにいるベートーヴェンとシューベルト。「ベートーヴェンを感じる」というのはその人の影響が見えるという意味です。加古川のアナゴみたいなものかな(笑)。アナゴは汽水に住むのですよね。淡水と海水が混じる汽水には美味しい魚がいるそうです。混沌としていて他と違う何かが生まれる感じ。―では、ベートーヴェンにはどんな作曲家を感じるのですか。初期の作品では、ハイドン、エマヌエル・バッハですね。上流から流れてきたものと自分の中にあるもの両方が見えるところがあります。また、ある部分が後になって、みんなが知っているメロディになることもありますね。萌芽っていうのかな、ある音楽的アイデアの始まりが見えるのが初期の作品の面白さですね。―シューベルト以降の作曲家にはシューベルトを感じたりするのですね。しいて言えば、シューマンにはシューベルトとのつながりを感じますね。ブラームス、ワーグナー、ドビュッシーなど。どんな作曲家も先人から学び、時間をかけて自分の音楽を作っていくわけです。―今回のプログラムは『道』に大きな意味があるのですね。バッハ、ハイドン、そしてシューベルトの交響曲です。第7番「未完成」や第8番「ザ・グレート」。晩年の2曲は演奏される機会が多いですね。今回は、今、お話した初期の第1番を味わっていただくプログラムです。歴史が見える構成になっています。美術館って順路があるで27

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