KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年2月号
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辞め、神戸へ引っ越すことにしたんです」この先輩の名は、映画監督の濱口竜介。昨年、カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞、今年の米ゴールデングローブ賞の非英語映画賞(旧外国語映画賞)を受賞した「ドライブ・マイ・カー」の監督である。2013年5月から、濱口監督、脚本家の高橋知由さんと3人で、神戸市長田区にある古い民家を借りて、合宿生活のように映画製作に没頭。ともに夢を追ってきた。「大学院の頃から助監督をしていたので、濱口監督からは大きな影響を受けています。その後、濱口監督は東京へ拠点を移しましたが、私はそのまま神戸に残り、今は市内で暮らしています。まだまだ、神戸で撮りたい作品がありますからね」濱口監督の出世作となった映画「ハッピーアワー」(2015年)では濱口、高橋と3人共同で脚本を執筆した。5時間17分という超長編映画で、その舞台は神戸。約8カ月間かけて神戸各地で撮影された渾身作は、ロカルノ国際映画祭で最優秀女優賞、脚本部門の特別賞を獲得するなど国内外で高く評価された。「何度も脚本を書き直すなど、この『ハッピーアワー』で培った経験が、新作『三度目の、正直』の中に大きく生かされたと思います」と語る。長編監督としての念願のデビューは、助監督や脚本家として経験を積む中で、ようやくつかんだチャンスだった。しかも、人気小説や漫画などを原作にした映画が増える中、近年、困難とされるオリジナル脚本での映画化にこぎつけたのだ。「主演女優の川村りらさんをはじめ、キャスト、スタッフも『ハッピーアワー』を一緒に撮ったメンバーたち。小規模ですが、息の合ったチームに恵まれ、そして神戸という恵まれた環境で撮ることができました」「ハッピーアワー」では撮影中でも脚本を何度も書き直していったというが、新作映画ではどうだったのか?「女性の視点が繊細に脚本で描かれている―。そう、評価してもらえるのは、共同執筆した主演女優でもある脚本家、川村さんのおかげだと思います。撮影中は、役者の人たちからも意見を聞きながら、それを生かし、二人で何度も脚本を練り直していきましたから」師匠と先輩「三度目の、正直」は、昨年、東京で開催された東京国際映画祭のコンペ部門にノミネートされ、観客の前で初お披露目された。「先輩の濱口監督、そし22

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