KOBECCO(月刊 神戸っ子)2022年1月号
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「あまり八角を効かせず神戸人の口に合う創作料理を提供しています」。真新しい店舗を見渡しながらそう語るのは『Bistoro MARUO』オーナー・王健有さん。実家は1948年に元町で創業した喫茶『マルオー』だ。祖父母の時代から営み林檎をまるごと包んで焼き上げたアップルパイ『ウィリアム』は関西を代表する銘菓だった。昨年、店舗は惜しまれながら閉店したが新たな場所、形態でかつての面影を残しながら再始動している。御影工業高校時代に調理師を目指し専門学校へ進学するも被災し学業を断念した。だが6店舗にも及ぶ飲食店の厨房が学びの場となった。イタリア、アジア系に加え自宅の食卓に伝わる創意工夫の味を継承し『神戸台灣華僑系dining』と称す新ジャンルを確立した。独立後、日中は父親が「喫茶」、夕刻になると自身が切り盛りする「ビストロ」を展開した。「あの頃は、日が落ちるとメニューも客層も全く異なりました」と振り返った。この日は人気のランチメニューを注文。「ボリューム満点ですが値段が少し…」という謙遜に「サービスが過ぎます」と即答した。「マルオーの歴史は3世代に渡りますが時代の流れに順応していきます。とは言え、父親がまたケーキを焼き始めるかもしれません(笑)」。様々な文化を融合させ逞しくなった令和の「MARUO」に期待したい。第九十七回老舗店舗の新たな挑戦が始まる『Bistoro MARUO』神戸のカクシボタンkakushi button写真/文 岡 力温故知新にこだわる王健有さんMARUOランチセット(1,500円)お粥セット(1,000円)自家製「XO醤」は手土産にも最適■岡力(おか りき)コラムニスト・放送作家ふるさとが神戸市垂水区。関西の大衆文化をテーマとした執筆・テレビ、ラジオ番組を企画。連載「のぞき見雑記帳」(大阪日日新聞)「あての履歴書」(大阪スポーツ)■Bistoro MARUO神戸市中央区中山手通2-17-8【電】078-806-854198

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