KOBECCO(月刊 神戸っ子)2022年1月号
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ゆる抗体カクテル療法)やソトロビマブがあり、感染した早期に使用することで重症化することを防ぐことができます。過剰な自己免疫による炎症を抑えるためにはステロイド製剤(デキサメサゾンなど)やバリシチニブを使用します。また当院では肺の炎症とその後の線維化を抑えるトシリズマブを倫理委員会の許可のもと使用しています。これらの戦略と同時に大切なのは様々な炎症でダメージを受けた肺のサポートです。COVID-19肺炎が重篤になると自分の肺だけで酸素を取り込むことができなくなり、鼻やマスクからの酸素投与や高流量鼻カニューレ (HFNC) 療法、悪化すれば人工呼吸器での呼吸管理が必要になります。また人工呼吸器管理が困難な状態では体外式膜型人工肺(Extracorporeal Membrane Oxygenation:ECMO)も使用します。当院では軽症から中等症の場合は感染症内科と各内科からの混成チームで診療し、重症化した場合は感染症内科と麻酔科による集中治療を行っています。少しでも肺をいたわっていくために軽症患者から重症患者まで悪化した肺を保護する体位を工夫してチームで取り組んできました。軽症者で入院した時点より最も酸素を取り込みやすい体位を判断し、腹ばいになる腹臥位だけでなく、座った姿勢も利用して過ごしてもらうようにしています。ところで自然感染またはワクチンによって抗体ができた人に感染することができる新型コロナウイルスは免疫を回避する性質を持っていることになります。2021年12月現在、このような免疫を回避する性質を獲得した変異株の中でも特に感染力が強いものとしてβ株、Δ株、オミクロン株が世界で出現しています。このような変異株を作り出さないためには有効なワクチン接種に加え、できる限りの不織布マスク着用がカギになります。変異株のニュースの一方、様々な期待できそうな薬剤も開発されてきています。例えば静脈注射でしか使用できないレムデシビルと異なり、内服の抗ウイルス剤であるモルヌピラビルやパクスロビドTMなどです。まだまだ予断は許しませんが、何とか次の波も力を合わせて超えていければと願っています。43

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