KOBECCO(月刊 神戸っ子)2022年1月号
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う立体としか呼べない作品の応募が急増。審査委員たちは、それを私のせいにしていたらしいですよ」と当時の〝美術界の混乱ぶり〟を振り返り、日比野さんは笑った。1982年、独創的な段ボールアートで鮮烈にデビュー。以来、〝ポップアートの旗手〟として約40年にわたり、現代芸術の世界で第一線を駆け抜けてきた。その創作人生を振り返る美術展が、今、兵庫県姫路市の姫路市立美術館で開催中だ。タイトルは「The Museum Collection Meets HIBINO新作の小説や映画に新譜…。これら創作物が、漫然とこの世に生まれることはない。いずれも創作者たちが大切に温め蓄えてきたアイデアや知識を駆使し、紡ぎ出された想像力の結晶だ。「新たな物語が始まる瞬間を見てみたい」。そんな好奇心の赴くままに創作秘話を聞きにゆこう。第15回は現代美術家、日比野克彦さん。垣根を超えろ…平面、立体から社会概念も突破する現代美術家の挑戦THESTORYBEGINS-vol.15日比野 克彦さん⊘ 物語が始まる ⊘を醸すことになる。なぜなら、その受賞作は、段ボールに描いた作品だったから。平面作品に限る―とされた応募規定に挑むかのような応募に、「果たして段ボールは平面か立体か?」と論議され、審査会はもめにもめたという。「私の受賞作は、厚さわずか1センチの段ボールだったのです。それが翌年から、段ボールから5センチも飛び出した、も40年の集大成「そもそも創作活動においては、平面も立体も関係ありません。段ボールは平面ですが、折り曲げれば立体になるし、また、元に戻したら平面になるのですから…」今から40年前。現役の東京藝大大学院生が美術界の権威である「日本グラフィック展」大賞を受賞したが、これが物議20

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