年輩者の姿もあった。そのような昭和のスターの中には、川上哲治、大下弘、石原裕次郎、三島由紀夫、田端義夫、嵐寛寿郎、浜村美智子、大島渚、高倉健、鶴田浩二、瀬戸内寂聴、柴田錬三郎、手塚治虫、浅丘ルリ子、山川惣治、亀倉雄策等々、ここに登場する友人の多くも今は鬼籍の人となってしまった。余談になるが、自分も長く生き過ぎたと思うことがある。日本人の男性の平均寿命もとっくに通り越していて、自分がまだいるということ自体が奇跡ではないかと思うことがある。また会期中には篠山さんのトークショーと磯崎新さんと横尾の公開対談も行われた。この篠山紀信展のあとは、2015年1月24日から開催された「大涅槃」展である。担当学芸員は、最近兵庫県立美術館に移動した林優さんが、僕のコレクションした600体の涅槃像を会場の中央に見事なインスタレーションによって、見る人の目を釘付けにした。タイの等身大の涅槃から、2センチ大の極小涅槃まで、東南アジアからヨーロッパ、アメリカへ涅槃探しの旅に出掛けた。ところがなぜ涅槃像に取りつかれたのか、自分でもさっぱりわからない。理由も目的もなく、ただ涅槃像を求めて、骨董市から玩具市まで、血まなこになって涅槃を求めた2年間だった。こうして集めた涅槃像と近代洋画家の描いた横臥裸像や近世日本美術の仏涅槃図も同時に異色の展示になった。また、会期中には、その昔、僕の担当編集者であった玉川奈々福さんの浪曲ライブも開催され、彼女の名調子に観客はすっかり聞き入った。さて、「大涅槃」展のあとの10回展は「カット&ペースト」展のコラージュ展が待っていた。キュレーターの山本淳夫さんは横尾作品においてはコラージュ的手法や考え方が非常に重要な役割を果たしているが、とりわけそれが先鋭的かつ直接的に前景化した80年代末~90年代初めの時期に着目した。2Fにはキャンバス・オン・キャンバスの多重絵画、3Fにはテクナメーション17点が一同に展示された他、NY在住のアーティストKAWSのコレクションより2015年のコラージュ作品9「横尾忠則 大涅槃展」2015年「横尾忠則展 カット&ペースト」2015年18
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