KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2021年12月号
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─日常の喧噪から離れて、心静かに過ごせます。小池 お寺はサードプレイスでありたいと思っているんです。ファーストプレイスは自宅、セカンドプレイスは学校や職場などですが、忙しい現代人はこの両所をひたすら往復しているんですよね。そこは役割を生きる場所で、すべての行動に意味づけが必要なんです。せわしなく生きている人たちが自分の役割を降ろせる場所。ありのままの命に還れる場所。それがお寺かなと。なぜなら、祈ることそのものが意味であり、それ以上の意味を求めなくて良い。そして、仏様の前では役割はなく、すべて平等な存在になれるからです。日常生活の中で行き詰まったり、独りになりたくなったり、そんな時には近くのお寺や神社で深呼吸するだけで豊かな時間が過ごせるし、出会いやふれあいもあるでしょう。悲しみの中にある人も、喜びの中にいる人も、しかも子どもからお年寄りまで多様な人が交差し、肩書きも利害関係もなく、ありのままの自分でいられる場でありたいですね。─いつ頃から「須磨のお大師さん」と親しまれるようになったのですか。小池 江戸時代からではないかと思われます。昔は交通が不便ですから高野山へ行けないので、周辺の人たちが弘法大師を信仰する道場として、ご縁日の20日・21日に通ってくださるようになってからでしょうね。ご縁日は信仰としての須磨寺の特徴でもあります。実は「須磨寺」は通称で、正式名は「上野山福祥寺」です。「須磨寺」とよばれるようになったのは、江戸時代の少し前ですね。─須磨寺にはいろいろな魅力がありますね。小池 まず祈りの場であります。観音様は平安時代、和田岬の沖から出現されたと伝えられる正しょうかんぜおん観世音菩薩で、観音信仰の場として栄えてきた歴史があり須磨寺(上野山福祥寺)副住職小池 陽人(こいけ ようにん)大本山須磨寺寺務長 1986年生まれ。東京都八王子市出身。総本山醍醐寺修行道場「伝法学院」卒業後、四国八十八か所歩き遍路成満。清荒神清澄寺で天堂番として二年間修行。須磨寺では、生涯学習の場としての「青葉会」や「須磨 夜音 音楽法要祭」などを開催。NHK文化講座神戸教室の講師としても活動中。H-1グランプリ法話決戦in兵庫 初代グランプリ。令和元年に行われた全国初の超宗派法話大会「H1法話グランプリ~エピソードゼロ」実行委員長。ラジオ関西「田辺眞人のまっことラジオ」で、「ラジオ法話 心の深呼吸」のコーナーを担当。サンテレビの情報番組「キャッチプラス」の「きょうのオハナシ」コーナーに出演。2017年6月よりYouTubeチャンネル「須磨寺小池陽人の随想録」開設し、2週間に一度、YouTubeで法話を配信している。2017年9月より、須磨寺テレホン法話で3分間の法話を毎月更新している。テレホン法話:TEL078-732-5800著書に「しんどい心の処方箋」(柏書房)「おもろい」は生きる喜び38

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