KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2021年11月号
85/136

レートの変動現象が激しく、大きな災害にも遭いやすいところです。しかし、それと引き換えに自然の恵みもいっぱいあります。ですから恩恵をいただくときは当然ながら感謝しつつ、自然に対し畏敬の念を持ち、試練が与えられることを十分に覚悟して暮らしていくことが大事ではないでしょうか。また、そのことが日本人の精神性と関係し、独自の文化を育んできたのではないかと思います。有馬温泉はまさにプレートの恵み。温泉に浸かるとき、この湯が地下60㎞のプレートから来たと思うと、ありがたさもひとしおでしょう。そして夕食にはぜひ瀬戸内の魚を召し上がっていただきたいですね。有馬がオンリーワンである理由─日本列島の変動と裏表であることを知り、体感すれば、改めて有馬の価値を感じていただけるのではないでしょうか。有馬温泉の活性化のためにも、その類い稀なる特徴をしっかり理解することが大切だと思います。巽 好幸理学博士(東京大学)。京都大学総合人間学部教授、同大学院理学研究科教授、東京大学海洋研究所教授、海洋研究開発機構プログラムディレクター、神戸大学海洋底探査センター教授、同大学高等研究院海共生研究アライアンス長などを歴任し、現在は神戸大学海洋底探査センター客員教授。日本地質学会賞、日本火山学会賞、米国地球物理学連合ボーエン賞、井植文化賞などを受賞。グルメとしても知られ、美食地質学を創始。多数ある著書の中でも『和食はなぜ美味しい?日本列島の贈り物』(岩波書店)は人気の一冊。2019年、ジオリブ研究所を創設し所長に。ジオ・アクティビストとして、美食地質学や先端地質学の情報発信などさまざまな活動をおこなっている。「変動帯の民」日本人が、「人新世」の地球そして日本列島で生きるということを考える地球で最も地震や火山が集中する、世界一の「変動帯」日本列島。私たち「変動帯の民」は、こんな日本列島から数え切れないほどの試練を受け、同時に豊かな恩恵に浴しながら、この島と共に暮らしてきました。人類が、太陽系唯一の「水惑星地球」の環境に大きな影響を与え始めた「人新世」。この時代を私たちはどのように生きてゆくのか?私たち「変動帯の民」のDNAに刻まれた「記憶」を呼び起こしながら一緒に考えていくのがジオリブ研究所です。こちらからジオリブ研究所の活動をご覧いただけます。巽先生が所長を務める「ジオリブ研究所」へようこそhttps://geo-live.jp/about/85

元のページ  ../index.html#85

このブックを見る