KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2021年11月号
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反面教師だった。洋画にも「お前は何者なんだ?何処に行きたい?」と問いかけてくるものが多かった。中でも、中三の時に度肝を抜かれた『特攻大作戦』(67年)の鬼才R・アルドリッチと地獄から戻ったような顔のリー・マービン主演のコンビで作られた『北国の帝王』(73年)は哲学科の教材にもなりそうな見事な活劇だった。 時は1933年、路上に新聞紙を巻いて寝る失業者が溢れ、全米中の銀行が業務を停止した大不況のアメリカの、1973年から74年にかけて、ボクに人生を決めさせた映画は数多い。大阪の道頓堀東映で一月に観た『仁義なき戦い』もそうだし、四月には『仁義なき戦い 広島死闘篇』、九月には『仁義なき戦い 代理戦争』と、わんこ蕎麦の早食いじゃないが、よくもそんなに次々に出てくるものだと感心しながら、あちこちの映画館に入り浸ったものだ。戦後復興期の寄る辺なき若いチンピラが命懸けで生き急ぐ姿は、無職のボクに未来を考えさせてくれたオレゴン州を走る鉄道が舞台の話だ。彼ら失業者は貨物列車に無賃乗車して放浪する「ホーボー」と呼ばれ、それを許さない列車の車掌と死闘が繰り広げられた。見たことも聞いたこともない鉄道アクションにボクはすぐ引き込まれていた。ホーボーの中で“ナンバーワン”と渾名される無賃乗車の帝王がリー・マービンで、そこに帝王の座を奪いたい生意気な若造が現れる。彼らが一番恐れる鬼の形相をした車掌が乗る列車に乗りこもうという井筒 和幸映画を かんがえるvol.08PROFILE井筒 和幸1952年奈良県生まれ。奈良県奈良高等学校在学中から映画製作を開始。8mm映画『オレたちに明日はない』、卒業後に16mm『戦争を知らんガキ』を製作。1981年『ガキ帝国』で日本映画監督協会新人奨励賞を受賞。以降、『みゆき』『二代目はクリスチャン』『犬死にせしもの』『宇宙の法則』『突然炎のごとく』『岸和田少年愚連隊』『のど自慢』『ゲロッパ!』『パッチギ!』など、様々な社会派エンターテイメント作品を作り続けている。映画『無頼』セルDVD、2021年11月25日発売。38

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