―BL出版さんの本は、大人が読んで楽しめる作品がたくさんありますね。1997年に社名をBL出版(For the Best Library)に変更してから、子ども、大人を問わない新しい絵本のスタイルを追求しています。絵本はあらゆる世代の人のためのものだと思っていて、そのためにまず「いい絵であること」「大人が見ても楽しめる絵であること」を出版する上でとても大切にしています。というのも、仕事でヨーロッパに行くと、子どもたちがよく美術館に遠足に来ているんです。小さい頃から当たり前のように名画に接しているんですね。家庭でも、素敵な絵の本が本棚に置いてあるだけでそうした感覚が養われると思うのです。特に翻訳本は子どもたちが初めて出会う異文化の世界です。小さい時から外国の文化に触れることで、世界観を広げてもらいたいとも思います。―子どもにとって、まず身近にあるということが大切なのですね。はい。それから子どもは同じ本を何度も読んでと持ってくるでしょう。ある作家さんの講演会に、ボロボロの本にサインをもらいにきた女性がいて、作家さんは「ここまで読まれたなら、この本はもう僕の本ではなくてあなたの本です」と言ったそうです。その女性が言うには、「これを開くとお母さんの声が聞こえてくる」そうです。絵本とはまさにそういう存在でね、紙の絵本は100年以上は持ちます。そして、開くとお母さんの声とかお父さんの膝のぬくもりとか全部が詰まって…そこに絵本の世界が広がってくるんです。―長谷川義史さんの作品や、話題の作品も多く手掛けておられます。今、国内外で注目しておられる若手作家さんはいますか。最近では、豊福まきこさんの作品が人気です。2作目の『おどりたいの』はバレエの世界にあこがれる子うさぎのひたむきさを描いた可愛らしく美しい作品ですが、バレエの国ロシアの出版社から声がかかるなど海外でも評価を受け始めています。『チーターじまんのてんてんは』を描かれた神戸出身のみやけゆまさんもダイナミックな絵でこれからが楽しみな作家さんですね。―これからのBL出版さんの方向性をお聞かせください。今後もこれまで通り世界の秀作絵本を紹介する一方、日本の作家の個性あふれるオリジナル作品の出版に力を入れたいと思っています。これまで多くの方々とのつながりで面白い本ができたように、新しい作家さんとの出会いや意外性も大切にして、読者の世代にとらわれないで新しい本を神戸から紹介していきたいと思っています。『キツネ』本文より36
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