KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2021年11月号
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た。オリジナル第2弾の『ヴァイオリニスト』の原画を預かって帰国したのですが、その制作中に訃報が届きました。「日本で出版したオリジナルの2作品を、本国でも読めるようにしてほしい」という想いを継いで、2作品とも日本から権利を輸出という形で、フランスの出版社から刊行してもらっています。―『アンジュール』を機に、編集の世界に興味を持たれたのですね。はい。でも、その気持ちが強くなったのは、もう一つ出会いが「日本の読者にオリジナル作品を描いてほしい」とお願いしたところ、翌年の秋に突然『NABIL』と題された130枚近い原画のコピーが送られてきました。現地の出版社を飛び越えての挑戦で、原画が届いた時の感激は忘れられません。原画は鉛筆で描かれ、こすってぼかしたところもあるため印刷には苦心しました。2000年4月、完成した『ナビル ある少年の物語』を手にご自宅を訪ねると、白い扉の向こうで少しおめかししたバンサンさんが変わらない笑顔で出迎えてくれました。居間に日本で出版した全作品を並べてくださっていたのは、私にとって最高のもてなしでしあったからです。『アンジュール』の愛読書カードに、「今江祥智さんの講演会でこの絵本を紹介されました」と多くの方の声が寄せられて、そのご縁で、今江さんとのお付き合いが始まりました。ご自宅に伺ったり、講演会や勉強会に声をかけていただくようになり、そこからさらに絵本のおもしろさを教えられたと思います。今江さんとのご縁で、1990年から、絵本作家による季刊誌絵本ジャーナル『Pee Boo』を発行したことも大きかったです。太田大八さん、宇野亞喜良さん、川端誠さん、杉浦範茂さん、田畑精一さん、田島征三さん、長新太さん、長谷川集平さん、村上康成さん、途中から荒井良二さんなど、毎回違う絵本作家の方々に責任編集をお願いし30号まで続きました。作家だけでなく編集者、書店員、読者など絵本を取り巻くあらゆる人たちが様々な角度から自由に絵本を語る画期的なもので、この活動を通して多くの日本の絵本作家さんとのつながりを深めることができました。編集者として育ててくれた恩人・今江祥智さん。ガブリエル・バンサンのアトリエにて34

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