KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2021年11月号
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オペラってちょっと難しそう。ミュージカルとの違いを教えてください。実はね、オペラが先にイタリアで生まれて、長い歴史を経てアメリカに渡り、ミュージカルになったんです。だから本当はそこを分けずに観て欲しいんですよ。オペラは非常にドラマチック。「椿姫」が典型だけど、美しいヒロインがいて恋物語が始まって、でも病気になって亡くなってしまう。ざっくりだけど(笑)。そんな悲劇が多い。そこから喜歌劇と訳されるオペラ・ブッファが生まれます。名前の通り、楽しめる内容が主で、人の死がメインじゃない(笑)。モーツァルトの「フィガロの結婚」、ロッシーニ「セビリアの理髪師」など、親しみやすいメロディも特徴の一つです。そこからジャズやラテンの要素やダンスが加わってミュージカルになります。オペラの基本はクラシック音楽?大編成のオーケストラはオペラの醍醐味ですね。必ず生演奏です。ミュージカルは電子楽器が入り、歌にはマイクが入ります。でもね、バーンスタインの「オン・ザ・タウン」「キャンディード」は、オーケストラが入るけど、ブロードウェイ公演もするからミュージカルでしょ。ビゼーの「カルメン」は有名なオペラだけど、誰でもメロディを歌える(ハバネラのメロディを歌いながら♪)。これ僕はミュージカルって言ってもいいと思う。実はきっちりとした垣根はないよね。この夏、兵庫県立芸術文化センターにて「メリー・ウィドウ」をご覧になった方も多いと思います。世界中が取り上げるオペラの代表作です。兵庫県には宝塚歌劇場があるので、もともとミュージカルファンがいるんです。素晴らしいことです。僕は、芸術文化センター建設の際に希望を出しました。ホワイエを、大中小のホールを行き来できる位置におくことです。例えば、ある日の大ホールではオーケストラ、中ホールはお芝居、小ホールは落語会。それぞれのお客さんが通る。幕間の休憩時間、落語を聞いたお客さんの楽しそうな様子を見て、お芝居を見た人が「次は落語に行こうかな」と思うかもしれないし、お芝居を見たお客さんの様子を見て、クラシックファンが興味を持つかもしれない。ファン同士が顔を合わせ、交わることで、興味が広がるといいな、と思っていました。時間はかかるけれど、いま、芸術文化センターのオペラは多くのお客様に見て頂けるようになりました。オペラとオーケストラ。指揮者としての面白さは?オペラには「筋」がある。音に込めるのは、喜び、悲しみ、死や解放。一つの音の意味が大きいですね。そして、人が生で歌います。人は日によって体調も気持ちも変わるので、当然歌も変わってきます。それにどう歌いたいかは、人それぞ29

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