KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2021年11月号
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る神経にも傷みが及ぶと寝たきりの状態になってしまいます。パーキンソン病や筋委縮性側索硬化症もそれぞれに、ある種のたんぱく質が脳にたまって発症するということが分かってきています。―認知症の早期発見や治療方法の研究も進んでいるのですか。以前は亡くなった患者さんの脳を病理解剖して異常なたんぱく質を確認する方法しかなかったのですが、最近はPET検査で分かるようになってきました。さらに、たんぱく質がたまらないようにする薬もアメリカでは薬事承認され、初期の段階で見つけて、症状を改善することも可能になりつつあります。ただし、日本ではまだ承認されていません。―予防方法は。小児期から20歳頃までに読み書きや勉強で脳をたくさん使うと神経細胞同士が電線でつながりしっかりした配線ができます。すると、余計なたんぱく質が脳にたまり神経細胞や電線が傷つけられたとしても影響されにくく、症状が現れにくいという研究結果が出ています。―私たち大人はもう手遅れですか?!決してそういうことはないです(笑)。運動をしたり、脳を使ったりすること。脳トレが流行っていますが無駄ではないと思いますよ。人とコミュニケーションを取ることが認知症の進行を抑えるということも実証されています。今はコロナ禍で引きこもりがちで症状が悪化するケースもあり、問題になっています。さらに食事に気を使って動脈硬化を起こさないようにすることも大事です。良質な食事は、脳に栄養分を十分に行き渡らせ、異常なたんぱく質を体の外へ排出できるようにします。「食事」「運動」「頭を使う」。この3つが認知症予防のキーワードです。もの忘れが心配な方は、当院の脳神経内科・精神科のメモリークリニックで、病的なもの忘れか、加齢相当の心配のないものか、などご相談に乗ることが出来ますので、かかりつけ医からご紹介いただいてください。―脳神経内科の外来はどんな症状の患者さんが受診されるのですか。めまいやしびれ、頭痛、ふらつき、手足のまひ、けいれんなどの症状が多いですね。まず、患者さんから症状について詳しくお話を聞きます。脳に近い頭や顔からはじめ、手足の力や感覚、歩き方、ハンマー(打診器)を使って全身の神経の反射などをみます。お話(問診)と神経の診察で8割以上はどこが傷んでいるか診断が可能です。その後、原因を突き止めるためにCT、MRIや脳波、髄液の検査などに進みます。例えばメニエール病でめまいが起きている、腰のヘルニアが脊髄を圧迫してしびれがある、脳に腫瘍や硬膜下血腫がありふらつ102

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