KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2021年10月号
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「余力」という相反することの両立を、複数の医療機関で調整しつつおこなうことは大変難しく、強力なリーダーシップが必要ではないかと思います。─医師会はどのような役割を担うのでしょうか。岩永 地域医療構想では、必要な議論・調整は「地域医療構想調整会議」で行うことになっています。この会議が今後リーダーシップを発揮できるようにすることが重要ですが、その議長には医師会の代表が想定されていますので、地域医師会が主導的役割を果たすことになるでしょう。医師会は会議のメンバーである公立・公的病院と民間病院間、そして行政との橋渡し役として適任ですので、医師会が中心となって人と組織のネットワークを構築し、調整会議が円滑に進めば良いですね。いことも病床の逼迫を助長しています。─感染症パンデミックを踏まえた地域医療構想に重要なことは何でしょうか。岩永 ウィズコロナやポストコロナの時代でも、人口減少や高齢化の進行により「少ない担い手で多くの高齢者を支えなければならない」という中長期的課題は不変である以上、地域医療構想を引き続き進めて「効率」的な医療体制を構築していく必要があります。一方で感染拡大時の短期的な医療需要に対応できるよう、受入候補医療機関、感染患者の入院する場所、医師や看護師などのマンパワー、感染防護具や医療資機材をあらかじめ準備し「余力」を確保すべきです。そして感染拡大時の医療機関間の連携や役割分担、例えば感染症対応と一般診療対応の役割分担や応援職員派遣などの連携にかかわる協議を実施しておくことも重要です。「効率」と際の受入実績も大きくなる傾向があります。しかし一方で、100床未満の受入可能病院のうち半数以上が実際に患者を受け入れ、医師や看護師の少ないところでも多く受け入れています。─新型コロナ患者を受け入れている医療機関ではどのような問題が起きていますか。岩永 小規模で余力がなくても患者を受け入れざるを得ず、医療従事者の疲弊が大きな問題になっています。感染患者受け入れのために一般病棟の縮小や閉鎖、さらに受診控えや風評被害などもあり一般診療が低調で病院経営の悪化も深刻です。また、手術の延期や外来制限など他の疾病の治療を制限したことにより患者さんの病状悪化という事態も発生しています。後方支援医療機関の不足も問題で、コロナは回復したけれど合併症の治療が必要な患者を転院させることができず、新規感染患者を受け入れられな記事内容は取材日(2021年8月28日)時点での情報に基づいています。新型コロナウイルスに関する情報は日々変化しています。最新の情報は各自ご確認ください。77

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