KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2021年10月号
73/116

やサントリーなどさまざまなコラボレーション、自然解凍でおいしい冷凍駅弁の通販など既成概念をぶち壊して新たな境地を切り拓くだけでなく、浜坂駅の名物駅弁「かに寿司」の味を撤退した業者から継承、攻めるも守るも自由自在だ。これからも淡路屋のアイデアと情熱、遊び心は無尽蔵。人を乗せないJR貨物の駅弁を発案しちゃったり、「ひっぱりだこめし」の容器でたこ漁にまでトライしちゃったり、その斜め上を行く発想に常人は唖然とするばかりだ。そもそも兵庫や神戸は鉄道と食の分野で先駆的な役割を果たしてきた。駅弁の起源は諸説あるが、明治10年に神戸駅で販売されたのが最初という説もある。食堂車も神戸に本社があった山陽鉄道(後に国有化・現在の山陽本線)が明治32年に設置したのが最初とされる。つまり、駅弁を味わうことは、兵庫や神戸の地域文化を味わうことに等しいといっても過言ではない。しかしいま、コロナ禍のダメージが大きい飲食と旅行が重なる立ち位置にある駅弁業界は窮地に立たされている。また、昨今は駅構内にコンビニが進出したことも駅弁業者を追い詰めている。食は旅の楽しみの大きく太い柱であり、駅弁は地域の食文化がギュッと詰まった玉手箱だ。その蓋を開けても浦島太郎のように老けたりはせず、旅先なら風情を輻輳させ、自宅なら旅の思い出や憧れをかき立てる。それは、駅弁が文化だから成せる業。何気ない日常に駅弁をいただくことは胸躍るし、何よりも業者を救い文化を守ることに繋がる。自由気ままに旅することが難しい時代だからこそ、ぶらり駅弁市場へ立ち寄り、気軽に駅弁に舌鼓を打ち、ステイホームしながらしばし旅の気分を味わってはいかがだろう。そしてまたいつの日か、旅の空で駅弁を…。文化を召しませ73

元のページ  ../index.html#73

このブックを見る