KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2021年10月号
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れた時期もあって、やはり活動を止めるのが苦しかったです。今は以前ほどにお客さんは戻らないにしても、毎日上映できるというだけで心の平穏が保てています。江口 今、ちょうど上映しているのが、「サイレントフィルムライブ」。無声映画に楽士の方が生で演奏をつけるのですが、これはコロナ時代でも体験できる劇場ライブです。しゃべらないから、衛生的にもOKだし(笑)。林 楽士の鳥飼りょうさんが、即興で伴奏をつけていくのですが、その日のお客さんの様子を見て、「コメディだけど、まだ盛り上がってないな」というとタッチを変えたりして、お客さんの気配を感じながら演奏してくださるんです。1階の大きなシアターで行うのは初の試みで、それも一週間連続上映なんてサイレント映画最盛期以来じゃないかなって言っています。―今の時代にこそ、楽しみたいイベントですね。林 そうなんです!もっとも古い形なんだけど、今あたらしい(笑)。従来のサイレントファン層もいるんですが、今回は若い方たちもちょこちょこ来てもらっているのがうれしいです。―本の扉・裏にも引用された言葉「私たちの生活には、パンだけでなく、バラも必要だ」(ケン・ローチ監督「ブレッド・アンド・ローズ」)が心に沁みます。江口 この言葉は、発足当初から大切にしている元町映画館の志的なものですが、コロナ禍の今、10年前当時に思った以上により多くの方に響く言葉だと思います。林 元通りになるには時間がかかるかもしれないし、その間にできることはしていこうと。この夏は、池谷薫監督のドキュメンタリー塾をオンラインで開催しました。全国だけでなく、世界からも参加があって想像以上の大盛況だったのは、コロナ時代ならではの挑戦だったと思います。江口 本の最後のメッセージには、コロナ禍の今を「あんな時代もあったよね」って早く笑える日がくればいいなという気持ちを込めています。林 「1日も早く、映画館にみなが集い、笑い合える日が戻るのを祈って」。 元町映画館で、お待ちしています。元町映画館 神戸市中央区元町通4-1-12TEL.078-366-263639

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