とかあと数年は何らかの形で本の収入を得続ける必要がありますので、あと一年、あと二年というつもりで頑張ろうと思っています。取材を終えて「あと一、二年…」。本人は謙そんしながらこう語るが、神戸の偉大な文学者の力強い『続投宣言』に心が震えた。デビューから60年を越える今なお、アイデアを紡ぎ出し、書き続ける熱き創作魂は普遍なのだと…。「今から新作が楽しみで、しょうがない。まだまだ読めるぞ!」。このインタビューを読み、多くの筒井ファンは〝筒井ワールド〟はこれからも健在だ。こうほっと胸をなでおろしたのではないだろうか。(戸津井康之)ても多いはずです)にとって、「筒井さんと息子さんとの夢の中での再会」は希望であるとも思いました。改めて、この作品を書こうと思い立った経緯、夢で再会するという内容で書いた執筆の背景などを教えて下さい。筒井 あの作品にも書きましたが、妻が『伸輔、どこにいるのかしらね』と言ったことがあり、それに対して『夢の中だとでも言ってやればよかったかな』と思うくだりがあります。そこで実際に夢の中で伸輔に逢ったらどんな問答になるかなと考えてあの作品を書きました。勿論、実際にあんな夢を見たわけではなく、読者を泣かせてやろうなどと思って書いたわけでもないので、あくまで小生の考えるリアリズムで書いたつもりです。―装丁に伸輔さんの作品をあしらった《親子共演》にも惹かれました。その編集過程の背景についても教えてください。筒井 伸輔は編集者に好かれていましたので、表紙に伸輔の絵を使おうという提案は新潮社の編集者から出されたものです。―これからの作家としての新作の構想、展望などについて教えてください。そして、87歳にしてなおペンを握り続ける覚悟、その思いを教えてください。筒井 最後の短篇集『ジャックポット』を出して、もうこれで短篇は書けないな、と思いました。それ以前に最後の長篇『モナドの領域』を書いた時にも、もうこれで長篇は書けないと思いました。その時その時にそのことはどこかに書いている筈です。それでも落ち穂のように小さなアイディアが浮かんだりします。もう短篇や長篇の構想を練ることもできなくなっていますので、掌篇として月に一、二度発表していますが、これとていつまで続くかわかりません。いずれは掌篇集として出版します。家族の為にも、なん28
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