KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2021年7月号
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観ています。僕はそういうのが理想です。子どもに何かを伝える、ってそういうことなんじゃないかな。僕は若い時から子どものための芸術鑑賞教室を行ってきましたが、スメタナ作「我が祖国」では川や森を通じて自然のこと、シベリウス作「フィンランディア」ではフィンランドという国の悲しい歴史、少しでも考える機会になればいいな、と思って解説をします。音楽を聞くことで何かを感じることができると思っています。はなく、大人にも楽しんでもらえる内容の動画になりました。今回、ベルリオーズ作「幻想交響曲」を選んだ理由は?まずはシンプルに曲がいいこと。長い曲ですが、特に第4楽章、第5楽章はカッコイイですよ。それから、物語が魅力的で面白い。ちょっとドロドロしたところもある恋愛のお話ですが、実は、ベルリオーズ自身の失恋が元になっているんですよ。第4楽章では、とんでもない大事件が起こりますが、最後はハッピーエンド。そんな物語を楽器で表現しているわけです。子どもには難しい曲のような気もしますが…。子ども向けの音楽会って考え方は、やめた方がいいと思うんです。音楽に、子ども用も大人用もない。大人が聴いていいな、と思う曲は、子どももいいな、と思うんです。大人がカッコイイと思うものは、子どももそう思うでしょ。複雑なものを聴かせてもいいし、ちょっと大人の物語を伝えてもいい。そんな時は、少し大人が解説してあげたらいいんですよ。それは僕たち大人の役目。スタジオジブリの映画ってそうですよね。宮崎駿さんは、子ども向けの映画を作っているわけじゃないはずです。テーマは難しいし、物語はとっても複雑。そして大人が夢中になって42

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